公園やお友達の家で遊んでいるとき、わが子がおもちゃを独り占めして泣かせてしまったり、逆に取られて大泣きしたり・・・。そんな場面に出くわすと「うちの子は貸し借りが苦手なのかも」と不安になってしまいますよね。実は2歳前後のお子さんが貸し借りでつまずくのは、とても自然な発達の一過程です。この記事では、2歳児の発達段階を踏まえた貸し借りの練習方法や、親御さんが今すぐ実践できる声かけのコツ、トラブルが起きたときの対応法まで、専門的な知見を交えながらわかりやすく解説します。読み終える頃には「うちの子、ちゃんと成長しているんだ」と安心し、育児がもっと楽しくなるはずです。
2歳児が貸し借りを苦手とする理由
まず知っておいていただきたいのは、2歳児が貸し借りをうまくできないのは、わがままでも育て方の問題でもなく、脳と心の発達段階として当たり前の姿だということです。
焦って厳しくしつけようとする前に、まずは子どもの内側で何が起きているのかを理解しましょう。
自我の芽生えと所有意識の発達
発達の目安として、0歳から1歳では物の所有という概念自体がまだなく、1歳から2歳にかけて「これは私のもの」という意識が芽生え始めます。
そして2歳から3歳になると、少しずつ簡単な言葉で自分の要求を伝えられるようになっていきます。
つまり2歳児は、ちょうど「自分のもの」という感覚が強くなる真っ最中の時期にいるのです。
この時期に自分のおもちゃを守ろうとするのは、自我がしっかり育っている証拠でもあります。
イヤイヤ期と自己主張の関係
2歳前後は、いわゆる「イヤイヤ期」や「第一次反抗期」と重なる時期でもあります。
イヤイヤ期は子どもの自己主張が強くなり、自分の気持ちを押し通そうとする時期で、一般的に2歳前後から3歳頃まで続くとされています。
おもちゃを貸したくない、譲りたくないという気持ちも、この自己主張の一部として表れているのです。
「イヤ」と言えること自体が、心の発達においてとても大切なステップだと捉えてあげましょう。
3歳近くになると見え始める変化
ある子育て支援サイトの相談事例では、3歳近くになると言葉も発達し、叱っても口達者に言い返すようになる一方で、「貸して」「どうぞ」がしっかりできるようになるのは年中から年長くらいだと述べられています。
つまり2歳の時点でうまく貸し借りができなくても、決して焦る必要はないということです。
同じ相談事例では、2歳11か月頃には言葉の理解や多少の我慢ができるようになる子もいる一方で、まだまだ自己本位で「ここは自分の領域だ」という気持ちが強く出ると解説されています。

厚生労働省が示す2歳児の発達の姿
子育ての土台となる公的な指針にも、2歳前後の子どもの人間関係の発達について記載があります。
ここでは信頼できる一次情報として、国の指針を確認してみましょう。
保育所保育指針における位置づけ
厚生労働省が定める保育所保育指針では、1歳以上3歳未満児の保育について、心身の健康に関する領域「健康」、人との関わりに関する領域「人間関係」など5つの領域に分けて、保育のねらいと内容が示されています。
この指針では、人との関わりに関する領域を「人間関係」として、心身の健康に関する領域「健康」などとあわせてまとめて示していると説明されています。
国全体でこの時期の子どもの発達を「自立心を育て、人と関わる力を養う」段階として捉えていることがわかります。
自立心と人と関わる力を育てる時期
指針の乳児保育に関する記載では、人間関係の領域について、他の人々と親しみ支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養うことがねらいとして掲げられています。
2歳児の貸し借りの練習は、まさにこの「人と関わる力」を育てるための第一歩といえます。
無理に貸し借りを完璧にこなさせようとするのではなく、日々の小さなやり取りの積み重ねが将来の社会性につながっていくと考えると、気持ちが楽になるのではないでしょうか。
2歳児に合った貸し借りの教え方
発達段階を理解したところで、実際に家庭でできる関わり方を見ていきましょう。
大切なのは「貸せる子」に育てることではなく、「気持ちを言葉で伝えられる子」に育てることです。
「かして」「どうぞ」のやり取りを日常に取り入れる
家庭内で親子や兄弟間の関わりの中に、意識的に「かして」「どうぞ」というフレーズを取り入れることは、2歳児にとって効果的な練習になります。
実際に貸し借りの経験談として、家庭でも順番があることや、貸してほしいという意思表示の大切さを日頃から教え、遊ぶ時以外でも並んで待つときには「じゅんじゅんしよう」と声かけをしたという工夫が紹介されています。
絵本や童謡を活用するのもおすすめで、「貸して、どうぞ、ありがとう」といった歌を通して、自然と守れるようになったという声もあります。
「貸さなくてもいい」を前提にする
意外に思われるかもしれませんが、専門家の間では2歳児にとって「貸す」という行為自体がまだ高度すぎるという考え方が示されています。
2歳児にとって「貸す」という行為はまだ高度すぎるため、「貸さなくてもいい」「自分のものを大切にする気持ちも大事」ということを前提に、少しずつ「一緒に遊ぶ楽しさ」を経験させることから始めるとよいとされています。
この考え方を知っておくだけで、貸し借りができない我が子を責める気持ちが和らぐはずです。
公園で他の子に「貸して」と言われた場面では、頭ごなしに「貸してあげなさい」と命令するのではなく、「まだ遊びたかったんだね」と子どもの気持ちを受け止めたうえで、「お友達も同じおもちゃで遊びたいんだって。どうしようか?」と問題を一緒に考える姿勢を示し、「一緒に遊ぶ?それとももう少し遊んでから貸す?」といった選択肢を提示する方法が効果的だと紹介されています。
この対応は、子どもの自尊心を守りながら社会性を育てる、とても実践的なアプローチです。

順番を可視化して待つ経験を積ませる
2歳児は「あとどれくらい待てばいいのか」の見通しが立たないと、不安から余計に強く抵抗してしまうことがあります。
タイマーを使って「長い針が6のところに来たら交代しようね」と視覚的に示したり、数を一緒に数えながら交代するよう促す方法も有効です。
実際の子育て経験談でも、数を数えながら交代するよう声かけをし、譲ってあげたらまた順番が回ってくることを伝えたという工夫が紹介されています。
「待てば必ず自分の番が来る」という安心感を持たせることが、譲り合いの気持ちを育てる第一歩になります。
おもちゃの取り合いが起きたときの対応法
どれだけ練習をしていても、実際の場面ではおもちゃの取り合いが起きてしまうものです。
ここでは、トラブルが発生したときの具体的な対応の流れを整理します。
まず双方の気持ちを言葉にして受け止める
取り合いが起きたとき、多くの親がまずやってしまいがちなのが「どっちが先に使っていたの?」と犯人探しをすることです。
しかし2歳児にとって重要なのは、正誤の判断よりも「自分の気持ちをわかってもらえた」という安心感です。「使いたかったんだね」「悲しかったね」と、両方の子どもの気持ちをまず言葉にして受け止めてあげましょう。
注意点:「ケチ」「わがまま」といったレッテルを貼る言葉かけは、子どもの自己肯定感を傷つける可能性があるため絶対に避けましょう。
実際に紹介されているNG対応として、「ちゃんと貸してあげなさい」「お友達が悲しい顔してるでしょ」「ケチな子ね」といった言い方が挙げられていますが、これらは子どもを追い詰めてしまうだけで解決にはつながりません。
大人が仲介役になり解決策を一緒に考える
2歳児同士では、まだ自分たちだけで解決策を見つけることは難しいため、大人が仲介役として間に入ることが欠かせません。「一緒に遊ぶ?」「順番にする?」「タイマーが鳴ったら交代する?」など、具体的な選択肢を提示してあげると、子どもも自分で決めた感覚を持ちやすくなります。
子ども自身に選ばせることが、主体性と譲り合いの気持ちを同時に育てるポイントです。

噛みつきや叩くなどの行動が出た場合
2歳前後は言葉での表現がまだ発達途中のため、思い通りにいかない苛立ちが噛みつきや叩くといった行動に出てしまうことがあります。
こうした行動が見られた場合は、まずその場ですぐに、静かだけれどはっきりとした声で「痛いからやめようね」と伝え、噛んだ・叩いた理由となった気持ちを代弁してあげることが大切です。
警告:頻繁に噛みつきや強い他害行動が続き、家庭での対応だけでは改善が見られない場合は、一人で抱え込まず、かかりつけの小児科医や自治体の子育て相談窓口、保育園の担任などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
年齢別・貸し借りの発達目安一覧
お子さんの発達の見通しを持てるよう、年齢ごとのおおまかな目安を整理しました。
あくまで一般的な傾向であり、個人差が大きいことを前提にご覧ください。
| 年齢 | 貸し借りに関する発達の目安 |
|---|---|
| 0〜1歳 | 物の所有という概念自体がまだない |
| 1〜2歳 | 「これは私のもの」という意識が芽生え始める |
| 2〜3歳 | 簡単な言葉で要求を表現し始める(「ちょうだい」など) |
| 3〜4歳 | 「かして」「いいよ」などの言葉でのやり取りが増える |
| 4〜5歳 | 順番待ちや交代などの概念を理解し始める |
この目安からもわかるように、「貸して」と言ってから友だちに道具を借りるようなやり取りは、一般的に3歳以降から見られ始めるとされています。
2歳の時点でこのやり取りが上手にできなくても、発達の順序としてはまったく自然なことなのです。
2歳児の社会性の発達で見られるサイン
貸し借り以外にも、2歳頃は社会性が大きく育つ時期です。
日々の生活の中で、以下のようなサインが見られたら、それは着実に成長している証拠だと捉えてあげましょう。
お友達への関心が高まる行動
幼児教育の専門機関の解説によると、2歳児になると他の子どもたちと関わりながら遊ぶことが増え、協力や共感の機会が生まれてくるとされ、誰かがふざけると一緒にふざけ出したり、友達に興味を持って様子をうかがったりする行動が社会性の発達の表れとして紹介されています。
また同じ解説では、おもちゃの貸し借りの際に「かして」「どうぞ」が言えるようになることも、社会性の発達を示すサインの一つだと述べられています。
すべての子が同じタイミングで同じように成長するわけではないので、他の子と比べすぎず、わが子のペースを見守ってあげましょう。
模倣を通じて学ぶコミュニケーション
2歳児は大人や周りの子どもの言動をよく観察し、真似することで多くのことを学びます。
親が友達や家族とのやり取りの中で「貸して」「どうぞ」「ありがとう」を意識的に口にする姿を見せることは、言葉での説明以上に効果的な学習方法です。
日常のあらゆる場面が、子どもにとっての社会性の教材になっていると考えると、育児の視点が少し変わってくるかもしれません。
家庭で今日からできる練習アイデア
ここまでの内容を踏まえて、実際に家庭で取り入れやすい具体的な練習方法を紹介します。
特別な道具は必要なく、日常生活の中で無理なく続けられるものばかりです。
- おままごとやブロック遊びの中で、親が「貸して」「どうぞ」を実演してみせる
- 絵本の読み聞かせを通して、貸し借りや順番を守る場面のあるお話を選ぶ
- 兄弟や姉妹がいる場合は、タイマーを使って交代のルールを一緒に作る
- 公園に行く前に「今日は順番こしようね」と事前に見通しを伝えておく
- 貸せた・譲れたときには大げさなくらい褒めて、成功体験を積み重ねる
最も大切なのは、できなかったことを責めるのではなく、できたことを見つけて褒めることです。
小さな成功体験の積み重ねが、子どもの中に「貸してあげると嬉しい気持ちになれる」というポジティブな感覚を育てていきます。
よくある質問
Q. お友達のものを取り上げてしまうのは問題行動ですか?
いいえ、2歳前後では所有意識が芽生えたばかりで、他者の所有物との境界がまだ曖昧なことが多く、これは発達段階として自然な姿です。
頻繁に繰り返される場合でも、まずは根気強く言葉で伝え続けることが基本の対応になります。
Q. 保育園で貸し借りができないと集団生活で困りませんか?
保育園では日々多くの友達との関わりの中で、家庭以上に貸し借りの経験を積む機会があります。
保育士は子どもの発達段階を理解した上で個別に関わってくれるため、家庭と園で連携しながら見守っていけば心配しすぎる必要はありません。
気になることがあれば、担任の先生に日頃の様子を尋ねてみるとよいでしょう。
Q. 無理にでも貸すことを教え込んだ方がいいですか?
無理強いは逆効果になることが多く、おすすめできません。
強制的に貸させることを繰り返すと、自分の気持ちを我慢することばかりを学んでしまい、かえって自己主張ができない子になってしまう可能性があります。
まずは気持ちを受け止め、選択肢を示しながら、子ども自身のタイミングで譲れるように促すことが大切です。
まとめ
2歳児が貸し借りを苦手とするのは、自我や所有意識が育ち始めたばかりの、ごく自然な発達の一過程です。
厚生労働省の保育所保育指針でも、この時期は「自立心を育て、人と関わる力を養う」段階として位置づけられており、貸し借りの練習はまさにその力を育む大切なプロセスといえます。
大切なのは、貸せる・貸せないという結果だけを見るのではなく、子どもの気持ちを言葉で受け止め、「かして」「どうぞ」というやり取りを日常の中で少しずつ積み重ねていくことです。
うまくいかない日があっても、それは決して育て方の失敗ではありません。
長い目で見守りながら、今日できた小さな一歩をたくさん褒めてあげてください。
その積み重ねが、やがて年中・年長になる頃には自然な譲り合いへとつながっていきます。
焦らず、お子さんのペースに寄り添いながら、貸し借りの練習を親子で楽しんでいきましょう。