「せっかく作った離乳食を全然食べてくれない」「幼児食に切り替えたのに好き嫌いが増えた気がする」・・・1歳前後のお子さんを育てるパパ・ママなら、一度はこんな悩みにぶつかったことがあるのではないでしょうか。実はこの時期は、成長スピードの速さに食事からの栄養補給が追いつきにくく、特定の栄養素が不足しやすいタイミングであることが、厚生労働省の調査でも明らかになっています。
この記事では、1歳児に不足しがちな栄養素とその理由、家庭で無理なく実践できる補い方を、公的データや医療機関の情報をもとにわかりやすく解説します。難しい知識がなくても今日から取り入れられる工夫ばかりなので、ぜひ毎日の食事作りの参考にしてください。読み終えるころには、栄養バランスへの不安が「じゃあこうしてみよう」という前向きな気持ちに変わっているはずです。
1歳児はなぜ栄養不足になりやすいの?
1歳前後は「離乳食完了期」から「幼児食」へと移行する大切な時期です。
母乳やミルクに頼っていた栄養の多くを、今度は普通の食事からとる必要が出てきます。
ところが、この切り替えがスムーズにいかないケースは少なくありません。
離乳食完了期の壁
1歳を過ぎると1日3回の食事に加えて間食(補食)も必要になりますが、まだ噛む力や消化機能は発展途上です。
大人と同じ量を食べられるわけではないため、限られた胃の容量の中でいかに栄養密度の高い食事を用意できるかが鍵になります。
母乳・ミルク卒業と栄養ギャップ
母乳や育児用ミルクには鉄分やビタミンDなどが一定量含まれていましたが、卒乳・断乳が進むにつれてその供給源がなくなります。
特に母乳に含まれる鉄はごくわずかであり、生後6か月頃を過ぎても母乳だけで育てることは、鉄不足のリスクが高まり貧血が見られるケースがありますことから、離乳食・幼児食側でしっかり補う意識が欠かせません。

不足しがちな栄養素トップ5
数ある栄養素の中でも、1〜2歳児が特に不足しやすいとされているのが次の5つです。
自己判断でサプリメントを大量に摂らせるのは危険なので、まずは食事での工夫を優先しましょう。
| 栄養素 | 主な役割 | 不足時のリスク |
|---|---|---|
| 鉄分 | 脳の発達、酸素運搬 | 鉄欠乏性貧血、発達への影響 |
| ビタミンD | 骨の形成、カルシウム吸収 | くる病、骨の発育不良 |
| カルシウム | 骨・歯の形成 | 骨密度の低下 |
| 食物繊維 | 腸内環境の維持 | 便秘 |
| 亜鉛 | 味覚・免疫機能 | 食欲不振、味覚異常 |
この中でも特に注意したいのが鉄分とビタミンDです。
次の章から詳しく見ていきましょう。
鉄分不足のサインと補い方
鉄分が不足すると起こること
鉄は血液中で酸素を運ぶだけでなく、脳の神経発達にも深く関わる栄養素です。
鉄は脳の成長に大切な栄養素で、しかし1〜3歳の2人に1人が鉄不足の状態ですという指摘もあり、決して他人事ではありません。
さらに特に2歳以下では、鉄分の足りていない状態が3ヶ月以上続くと、認知能力、運動発達、社会性や情緒発達に影響を与える可能性があるといわれていますため、早めに気づいて対策することが何より重要です。
実際の数値で見ても、鉄分の推奨量は日本人の食事摂取基準2025年版で1〜2歳児が4.0mg/1日と示されていますが、令和5年国民健康・栄養調査では1〜6歳児の鉄分の1日の摂取量は3.9mgという結果が公表されています。
数値だけ見ると差はわずかに思えるかもしれませんが、平均値であることに注意してください。
偏食気味のお子さんはこれよりも大きく不足している可能性があります。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
鉄分には動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
体内の吸収率は、非ヘム鉄よりヘム鉄の方が約6倍高い差がありますが、非ヘム鉄はたんぱく質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで吸収率があがることがわかっています。
つまり、赤身のお肉やお魚(ヘム鉄)と、ビタミンCを含む野菜や果物を組み合わせることが鉄分吸収を高める最強の組み合わせというわけです。
鉄分を効率よく摂れる食材
- 赤身の牛肉・豚肉・鶏レバー(細かく刻んで煮込み料理に)
- まぐろ・かつおなど赤身の魚(フレークにしてご飯に混ぜる)
- 小松菜・ほうれん草(茹でてみじん切りにし、汁物やおかずに)
- きなこ・すりごま(ヨーグルトや牛乳に混ぜやすい)
- 大豆製品(豆腐、納豆など柔らかく食べやすい)
また、鉄を補う9か月頃の離乳食には赤身の肉、魚、レバーなどを積極的に使うことが「授乳・離乳の支援ガイド」でも勧められています。
1歳を過ぎても、この習慣を継続することが鉄不足予防につながります。
ビタミンD不足と日光浴の関係
くる病リスクと最新の目安量
近年、室内遊びの増加や紫外線対策の徹底などを背景に、ビタミンD不足の乳幼児が増えていることが医療現場で指摘されています。
ビタミンDが不足すると、骨の発育に必要なカルシウムがうまく吸収されず、くる病と呼ばれる骨の変形などを伴う病気につながるおそれがあります。
日本人の食事摂取基準では、日本人の食事摂取基準(2025年版)によれば、乳児におけるビタミンD摂取の目安量は5μg(200IU)と記載されています。
成人の目安量が18歳以上の男女ともに9.0μgであることと比べると数値としては小さく見えますが、体の小さい乳幼児にとっては十分に意識すべき量です。
日光浴と食事の両輪で補う
ビタミンDは食事からとるだけでなく、日光を浴びることで皮膚でも作られる珍しい栄養素です。
日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえた上で、食事摂取基準でも適度な日光浴の重要性が示されています。
とはいえ、紫外線対策と栄養のバランスは悩ましいところ。
まずは朝夕の涼しい時間帯に短時間、外気浴を兼ねて散歩することから始めてみましょう。
食事面では、鮭やしらす、卵黄、きのこ類(特に干ししいたけ)にビタミンDが多く含まれています。
しらすや卵黄は離乳食完了期から使いやすい食材なので、毎日の献立に少しずつ取り入れていくのがおすすめです。

カルシウム不足を防ぐ食習慣
日本人に根強いカルシウム不足の傾向
カルシウムは骨や歯を作る代表的な栄養素ですが、実は年代を問わず不足しがちな栄養素として知られています。
私たち日本人にとってカルシウムは身近でありながら、国民健康・栄養調査が始まって以来約75年に渡って、未だ摂取基準を充したことのない不足しがちな栄養素ですという指摘もあるほどで、これは子どもの食生活にもそのまま当てはまります。
1歳児は骨や歯がどんどん作られていく時期だからこそ、意識的にカルシウムを補う工夫が必要です。
乳製品以外でも摂れる工夫
「カルシウム=牛乳」というイメージが強いかもしれませんが、実際には様々な食材から摂取できます。
- ヨーグルト・チーズ(そのままおやつにも)
- しらす干し・小魚(骨ごと食べられる食材)
- 豆腐・納豆などの大豆製品
- 小松菜・チンゲン菜などの青菜
先ほど紹介したビタミンDはカルシウムの吸収をサポートする働きがあるため、カルシウムを含む食材とビタミンDを含む食材をセットで食べることで、より効率よく骨づくりに役立てることができます。
詳しい食事摂取基準の数値は、厚生労働省の公式資料でも確認できます。
日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 | 厚生労働省
1日の献立例で栄養バランス実践
頭では分かっていても、実際にどう組み合わせればいいか迷う方も多いはず。
ここでは1歳児向けの献立イメージを紹介します。
| 時間帯 | メニュー例 | 補える栄養素 |
|---|---|---|
| 朝食 | 軟飯、しらすと卵の炒り煮、みそ汁(小松菜入り) | ビタミンD、カルシウム、鉄分 |
| 午前おやつ | ヨーグルト、バナナ | カルシウム、食物繊維 |
| 昼食 | 鶏そぼろ丼、野菜スープ | 鉄分、たんぱく質 |
| 午後おやつ | きなこ蒸しパン、麦茶 | 鉄分、食物繊維 |
| 夕食 | まぐろと野菜の煮込み、豆腐の味噌汁 | 鉄分、カルシウム |
すべての食事に完璧を求める必要はありません。
1日〜1週間単位でバランスが取れていればOKという気持ちで、気負わずに続けることが長続きのコツです。
偏食・小食の子への工夫
遊び食べ・イヤイヤ期との付き合い方
1歳を過ぎると自我が芽生え始め、遊び食べや好き嫌いが目立つようになる子も増えてきます。
無理強いすると食事自体を嫌がってしまうこともあるため、「今日食べなくても明日食べればいい」くらいのゆるやかな姿勢で見守ることが大切です。
同じ食材でも切り方や味付け、盛り付けを変えるだけで急に食べてくれることもあります。
栄養を凝縮する時短ワザ
忙しい毎日の中で品数を増やすのは大変です。
そんなときは、ハンバーグやお焼きの生地にほうれん草や小松菜を混ぜ込んだり、味噌汁の出汁を鰹節や煮干しでとって鉄分をプラスしたりするなど、「混ぜる」「隠す」調理法を活用しましょう。
作り置きしたそぼろや野菜ペーストを冷凍しておけば、忙しい朝でも手軽に栄養をプラスできます。

気になる症状は小児科へ相談
受診の目安チェックリスト
次のような様子が見られたら、自己判断せず一度小児科に相談することをおすすめします。
- 顔色が青白い、唇の色が薄い
- 体重や身長の伸びが緩やかすぎる
- いつも機嫌が悪い、元気がない
- 食欲が極端にない状態が続く
乳幼児の貧血はゆっくり進行するため気づきにくいという特徴があります。
医療機関では通常1歳頃に貧血のチェックのための採血を行っていますので、健診の機会にあわせて相談してみるのも良い方法です。
フォローアップミルクの活用
食事だけで必要量を満たすのが難しいと感じる場合は、フォローアップミルクを活用する方法もあります。
フォローアップミルクは牛乳の約50倍の鉄が強化されている鉄補給目的の食品で、1日300〜400mL飲ませたり、料理に使ったりすることで手軽に十分な鉄を補うことができます。
ただし、これはあくまで食事の補助であり、フォローアップミルクだけに頼るのではなく、離乳食・幼児食の中でしっかり食べる習慣づくりを並行して進めることが大切です。
市販のベビーフードや鉄分強化食品を上手に取り入れるのも、無理なく続けるための現実的な選択肢です。
まとめ
1歳前後は成長スピードが著しく、鉄分・ビタミンD・カルシウムをはじめとする栄養素が不足しやすい時期です。
特に鉄分は脳の発達にも関わる重要な栄養素であり、意識的に赤身の肉・魚や青菜を取り入れることが望まれます。
また、ビタミンDは日光浴と食事の両方から補い、カルシウムは乳製品だけでなく小魚や大豆製品からも摂取するとバランスが整いやすくなります。
完璧な食事を毎食用意する必要はありません。
1週間単位で「今日は鉄分が少なかったから明日はレバーを使おう」くらいの気持ちで、できる範囲で少しずつ工夫を重ねていきましょう。
気になる症状がある場合は、迷わずかかりつけの小児科医に相談することも忘れないでください。
日々の食事作りが、お子さんの健やかな成長を支える一番のサポートになります。