「うちの子はまだ3歳だから、防犯なんて早いのでは?」そう思っていませんか。実は、防犯意識の土台づくりは3歳から始めるのがちょうどいいタイミングだといわれています。言葉を理解し始め、親の言うことを少しずつ覚えられるようになるこの時期こそ、遊びの延長で「安全のルール」を自然に身につけさせるチャンスです。
この記事では、警察庁や警視庁が公開している公式情報をもとに、3歳児にぴったりの防犯教育の教え方を、具体的なシーンや声かけ例を交えてわかりやすく紹介します。難しく考えず、親子のコミュニケーションを楽しみながら読み進めてください。
3歳児に防犯教育が必要な理由
「まだ小さいから大丈夫」と思われがちですが、実際には未就学児をねらった声かけ事案も報告されています。
3歳という年齢は、社会性やルールの理解が急速に育つ時期であり、この時期に安全に関する基本的な約束事を繰り返し伝えることで、将来的な危険回避能力の土台がつくられます。
声かけ事案は身近で起きている
大阪府警がまとめた令和7年中の子供に対する声掛け等事案の認知状況によると、時間帯別では午後3時台から午後5時台にかけての被害が多く、道路上での被害が多く、続いて公園になっています。
また女子への発生が約6割ですが男子に対しても約4割発生しており、声掛け等は一人でいる時が一番多く発生しています。
3歳児は保護者と一緒にいる時間が長いものの、公園や買い物中にふとした瞬間、目を離してしまうことは誰にでもあります。
日頃からの声かけが、いざという時の子どもの行動を左右するのです。
幼児期から始める防犯教育のメリット
幼児向けの防犯教育プログラムでは、就学前(幼児)の導入として「いのちは、いくつある?」「大きくなったら何になる?」といった問いかけから始め、危険をさける約束や危険な場所について学ぶ展開へとつなげていく方法が推奨されています。
いきなり「知らない人は危険」と教えるのではなく、まずは自分の命の大切さを実感させることが、防犯意識の第一歩になります。

「いかのおすし」を3歳向けにアレンジ
日本の子ども防犯教育の代表的な合言葉といえば「いかのおすし」です。
しらないひとに、ついて「イカ」ない、しらないひとのくるまに「ノ」らない、「オ」おきなこえでさけぶ、こわいなとおもったら「ス」ぐにげる、こわいなとおもったことは、おうちのひとにすぐ「シ」らせるという5つの行動指針が示されています。
2004年(平成16年)に警視庁少年育成課と東京都教育庁指導企画課によってこの防犯標語が考案されました。
3歳児には5つ全部は難しい
ただし、3歳児にいきなり5つのルールをすべて覚えさせるのは現実的ではありません。
専門家の見解でも、3歳児に5つすべてを覚えさせるのは難しく、年少児には「にげる」「さけぶ」の2つに絞って教えるのが効果的だとされています。
まずは「こわいと思ったら大きな声を出す」「その場からすぐ逃げる」という、体で覚えられるシンプルな2つの行動から始めましょう。
遊びながら覚える練習方法
言葉だけで説明しても3歳児にはピンときません。
以下のような遊びを通した練習が効果的です。
- 「こわい!」と大声で叫ぶ練習を、ゲーム感覚で親子で競争する
- 「にげて!」の合図で、実際にその場からダッシュして逃げる練習をする
- 絵本や紙芝居を使って「知らない人」のイメージを視覚的に伝える
- 人形やぬいぐるみを使ったロールプレイで、声かけされた場面を再現する
遊びとして繰り返すことで、いざという時に体が自然に動くようになるのが、幼児期の防犯教育の大きな特徴です。
「知らない人」の伝え方には工夫が必要
実は「知らない人についていかない」という教え方には落とし穴があります。
専門家の分析によれば、子どもを狙う不審人物は登下校時間に合わせて毎日犬を連れて散歩し、子どもが犬に興味を持ったり撫でたりする中で徐々に顔見知りになり、時間をかけて関係を築いた上で犯罪行為に出ようとするケースがあるとされています。
「知らない人」の定義をシンプルにする
3歳児は「知らない人」かどうかを的確に判断することができません。
そこでおすすめなのが、判断基準を単純化することです。「知らない人」というと曖昧になってしまうので、「家族以外にはついて行かない」と断定してしまう方が子どもにも分かりやすいという考え方があります。
3歳児には「パパとママ、おじいちゃんおばあちゃん以外の人とは、絶対に一緒に行かない」というシンプルなルールのほうが実践しやすいでしょう。
「優しい人ほど注意」という感覚を育てる
見た目や態度だけで安全かどうかを判断することはできません。
大人でも見分けがつかないことがあるほど、不審者の手口は巧妙化しています。
大人でも外見だけでは不審者かどうか判断できず、優しそうな人が近寄ってきたら素直な子どもは心を許してしまいがちだが、むしろ計画的な不審者ほど優しそうな外見や服装をしているものだとする指摘もあります。
3歳児にはまだ難しい概念ですが、「知らない人にやさしくされても、お菓子をもらったり一緒に行ったりしない」という具体的な行動レベルで繰り返し伝えることがポイントです。

日常生活でできる防犯トレーニング
防犯教育は特別なイベントとして構えるのではなく、日々の暮らしの中に溶け込ませることが継続のコツです。
お散歩・公園での声かけ練習
公園や散歩中に「もし知らない人が話しかけてきたらどうする?」とクイズ形式で聞いてみましょう。
3歳児は正解・不正解よりも「一緒に考える」プロセスを楽しみます。
人と話すときの距離を覚えることも、就学前の幼児向けプログラムの展開として重要な要素とされており、知らない人とは体2つ分くらいの距離を保つ感覚を、遊びの中で身体で覚えさせるとよいでしょう。
「こども110番の家」を一緒に確認する
近所を歩くときに、「子ども110番の家」をはじめとした安全な避難先を一緒に確認しておくことも有効です。
3歳児にはまだ一人で駆け込むことは難しいかもしれませんが、「困ったときに助けてくれる場所がある」という安心感を親子で共有しておくことが、将来の防犯意識につながります。
おうちルールを決めて繰り返し確認する
以下のようなシンプルな「おうちルール」を作り、毎日の登園前や外出前に確認する習慣をつけましょう。
- 知らない人にはついていかない(家族以外はついていかない)
- 知らない人の車には絶対に乗らない
- こわいと思ったら大きな声を出す
- こわいと思ったらすぐに逃げる
- 何かあったら必ずおうちの人に教える
毎日同じ言葉で繰り返すことで、3歳児でも自然と記憶に定着していきます。
子どもが話してくれない時の対応法
防犯教育で見落とされがちなのが、「何かあった後」の対応です。
実は、子どもは怖い思いをしても親に伝えられないケースが少なくありません。
子どもは黙っていることがある
子どもには、声かけやつきまといなどの出来事を保護者に言わないで黙っていることがあります。
子どもの様子が「いつもとちょっと違うな」と気になった時は、やさしく声をかけてあげましょう。
3歳児はまだ語彙が少なく、何が起きたのかをうまく言葉にできないこともあります。
普段と違う様子に気づいたら、まず「どうしたの?」とやさしく問いかける姿勢が大切です。
「話してくれてありがとう」を忘れずに
子どもから不審な声かけやつきまといなどについての話を聞いた場合は、周囲への注意喚起が早めにできるよう、迷わず学校や警察に連絡しましょう。
また、声かけやつきまといなどがあった時には、「大したことはなかったから、通報しなくてもいいか」と思わず、些細なことでも必ず警察への通報と、学校への連絡をお願いします。
子どもが勇気を出して話してくれたときは、まず「話してくれてありがとう」と受け止めることが、次も安心して話せる関係づくりにつながります。

保育園・幼稚園と連携した取り組み方
家庭だけでなく、通っている園での防犯教育の状況も確認しておくと安心です。
園での防犯教室の頻度と内容
保育・教育現場では、年2〜3回の実施が推奨されており、入園直後の4〜5月、夏休み前の7月、冬休み前の12月が効果的なタイミングとされています。
また、園児向けの防犯教室と職員向けの不審者対応訓練を分けて実施し、職員訓練は予告なしで行うと実践力が高まるという指導もあります。
園の年間行事に防犯教室が含まれているか、一度確認してみるとよいでしょう。
家庭と園で伝える言葉をそろえる
家庭で教えるルールと、園で教えられている合言葉を統一しておくことが重要です。
もし園で「いかのおすし」を教わっているなら、家庭でも同じ言葉を使うことで、子どもは混乱せずに理解を深められます。
連絡帳や懇談会の機会に、園がどのような防犯教育を行っているか聞いてみるのもおすすめです。
年齢が上がったときのステップアップ
3歳で教えた基礎は、成長とともにアップデートしていく必要があります。
4〜5歳になったら「いかのおすし」を完成させる
3歳で「にげる」「さけぶ」の2つを覚えたら、4歳・5歳になるにつれて「ついていかない」「車にのらない」「知らせる」を少しずつ追加していきましょう。
怪しい言動や服装など、不審者の特徴を交えながら教えると、より伝わりやすくなります。
小学校入学前に登下校のシミュレーションを
就学前には、実際の通学路を一緒に歩きながら「ここは危ない場所」「ここに助けてくれる家がある」と確認する時間を作りましょう。
登下校中などに怖い目にあったことのある小学生は45人に1人、留守番中に不審者が訪ねてきたことのある小学生は13人に1人という調査結果もあり、小学校入学後は保護者が常にそばにいられない場面が一気に増えます。
3歳からの積み重ねが、この時期に生きてきます。
まとめ
3歳からの防犯教育は、難しい知識を詰め込むことではなく、遊びや日常会話を通じて「安全な行動パターン」を体に染み込ませることが何より大切です。「いかのおすし」のすべてを一度に教える必要はなく、まずは「にげる」「さけぶ」というシンプルな2つの行動から始めれば十分です。
そして、知らない人の判断基準を「家族以外」というわかりやすい言葉に置き換えることで、3歳児にも理解しやすくなります。
何より重要なのは、子どもが何かを感じたときに、安心して話せる親子関係を日頃から築いておくこと。
防犯教育は一度で終わるものではなく、成長に合わせて少しずつ内容をアップデートしていく長い道のりです。
今日からできる小さな一歩を、ぜひ親子で楽しみながら踏み出してみてください。