「ダメって何度言っても聞いてくれない」「つい感情的に怒鳴ってしまって自己嫌悪・・・」そんな悩みを抱えていませんか。0歳から3歳までの乳幼児期は、自我が芽生え、好奇心が爆発する時期。親としては「叱るべきなのか、見守るべきなのか」と迷うことも多いはずです。
実は、子どもの叱り方には年齢に応じた「伝え方の正解」があります。発達段階を理解した声かけに変えるだけで、子どもの反応はびっくりするほど変わり、親の心もぐっと軽くなるのです。
この記事では、専門家の知見や公的機関の情報をもとに、0〜3歳児に効果的なNGワードと心に響く伝え方フレーズを徹底解説します。読み終わるころには、「叱る」ことが「伝える」に変わり、毎日の育児がもっと楽しくなるはずです。
「怒る」と「叱る」は別物|まず知るべき違い
育児に悩むほとんどの親御さんが、無意識のうちに「叱る」ではなく「怒る」になってしまっています。
この2つの違いを理解することが、伝わる声かけへの第一歩です。
感情をぶつけるのが「怒る」、教えるのが「叱る」
怒るとは「早く歯磨きしなさい!」のように気を荒立てて感情を伝える行為を指し、叱るとは「歯磨きしないと虫歯になるよ」のように間違いを諭す行為を指します。
つまり、怒るとは親自身の感情を訴えることで、叱るとは子どもに助言をすることです。
同じ場面でも、目的が「自分の感情を発散すること」になっていたら要注意。「叱る」は間違いを正したり、ルールや規則を伝えたりすることを指し、子どもは叱られるべきタイミングに適切に叱られることで、トラブルを回避する方法や社会のルールを学んでいきます。
一方で、怒っても子どもは原因が分からず、同じ失敗を繰り返してしまいやすいのです。
95%の親が「叱り方が難しい」と感じている
あるアンケート調査では、95%のかたが子どもを叱ることが難しいと感じており、中でも叱るときに難しいこととして「感情的になってしまう」という回答が80%にのぼったと報告されています。
つまり、悩んでいるのはあなただけではありません。
「叱り方が分からない」のは親として当たり前の感情。
だからこそ、ちょっとしたコツを知るだけで毎日がぐっと楽になります。

0〜3歳に多い「やってはいけないNGワード」
無意識に使ってしまいがちな言葉の中には、子どもの自己肯定感を傷つけたり、行動改善につながらないNGワードがあります。
ここでは特に避けたい代表的なフレーズを紹介します。
人格否定の言葉「悪い子ね」「ダメな子」
叱るときに人格を否定する言葉を使うのは絶対に避けましょう。「こんなことして〇〇ちゃんはだめね」と、子どもの人格まで否定する伝え方をすると、自信を失いかねないため、必ず行動を叱るのが鉄則です。
「投げたことはダメだったね」のように、行動だけを切り取って伝えることを意識してください。
他人と比べる言葉「〇〇ちゃんはできるのに」
「○○ちゃんならこんなことしないよ」などと言われると、子どもは自尊心を大きく傷つけられ、周囲と比較して自分はダメだと思い込んでしまう可能性があります。
きょうだいや友だちとの比較は、子どもの自己肯定感を著しく下げてしまう典型的なNGワードです。
脅し文句「鬼が来るよ」「置いていくよ」
とっさに口にしてしまいがちな脅し文句も注意が必要です。
一見効果があるように見えますが、行動の理由を学ぶ機会を奪い、恐怖でコントロールする習慣がついてしまいます。
恐怖による服従は、子どもの「自分で考える力」を育てません。
短期的に効くからといって繰り返すのは避けましょう。
実行できない罰の宣告「おもちゃ全部捨てるよ」
「いつもこんなに部屋を散らかして!おもちゃ全部捨てるからね!」と叱っても、子どもは片づけません。「散らかしたままでもおもちゃは捨てられない」という経験が重なると、「お母さん・お父さんが言ったことは本当には起こらない」と考えるようになります。
実行する気のない罰を口にするほど、親の言葉の重みは失われていくのです。
体罰は法律で禁止|国が示す方針
「軽くお尻を叩くくらいなら・・・」と思っていませんか。
実は、日本では体罰によらない子育てが法律で明確に定められています。
2020年4月から体罰禁止が法定化
令和元年6月に児童福祉法等改正法が成立し、親権者等は、児童のしつけに際して、体罰を加えてはならないことが法定化され、令和2年4月に施行されました。
つまり、しつけ目的であっても体罰は法的に禁止されています。
こども家庭庁では「体罰等によらない子育てのために」というガイドラインを公表し、社会全体で温かい子育てを支える方針を打ち出しています。
体罰が及ぼす影響
幼児期に体罰を受けた子どもは鬱や多動などの精神的な問題を持ったり、攻撃性が高くなったりするリスクがあると指摘されています。
「愛のムチ」という考え方は、現代の発達心理学では完全に否定されています。
もしカッとなってしまいそうなときは、一度その場を離れて深呼吸する習慣を身につけましょう。
0歳児への伝え方|環境を整えるが基本
「0歳から叱るの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
実は、この時期に必要なのは「叱る」よりも「整える」ことです。
0歳児には「ダメ」より「環境調整」
0歳から1歳の赤ちゃんは、まだ言葉を理解しておらず、自分の行動を自分でコントロールすることもできません。
危ない行動やしてほしくない行動を避けるためには、「ダメ!」と叱るのではなく「環境を整える」ことが大切です。
触ってほしくない物は手の届かない場所に移し、危険な場所には柵を設置する。
これだけで叱る場面は激減します。
一度の強い「危ないよ」は心に残る
とはいえ、命に関わる場面では毅然とした態度が必要です。
発達心理学の知見によると、赤ちゃん期は、危険なものに近づいたら厳しい表情で大きく声をあげるだけで十分で、赤ちゃんでも1回の経験で学習はできると言われており、一度厳しくNOを言われたことは、重要な出来事として赤ちゃんの心に根付きます。
普段は穏やかに、ここぞというときだけ真剣な表情。
このメリハリこそが、0歳児にとって最も伝わる叱り方なのです。

1歳児への伝え方|短い言葉と表情で伝える
歩き始め、好奇心が爆発する1歳児。「ダメ」と言ってもまだ言葉だけでは伝わりにくいこの時期、どう接すればいいのでしょうか。
1歳児への声かけのコツは「ゆっくり・短く・目を見て」
保育現場のプロが推奨する1歳児への伝え方は、「ゆっくり・理解できる簡単な言葉で、目を見て手を握り、時には抱きしめて話をすること」です。「飛び出しちゃダメ!」ではなく「この砂場で遊ぼうよ」とか、「公園から飛び出したら車が来るよ」と分かりやすい言葉で子どもの興味を引きながら飛び出しをしない状況を作ってあげることがポイントです。
長い説教は1歳児には逆効果
子どもに対して長々と説教をするのは、特に1歳児には無意味なことです。
1歳児を叱るときには、極力短い言葉を使うのがコツで、短い言葉は耳に入りやすく、1歳児でもジェスチャーと一緒に伝えることにより理解することが可能になります。
1歳児に響く「心に響くフレーズ集」
- 「あつい!やめようね」(短く端的に)
- 「いたいいたいになるよ」(結果を簡潔に)
- 「こっちで遊ぼう」(代替行動を提示)
- 「ママ(パパ)はかなしいな」(感情を伝える)
- 「ぎゅーしようね」(ポジティブな終わり方)
1歳児には「ダメ」より「こうしようね」と次の行動を示すのが、伝わる声かけの最大のコツです。
2歳イヤイヤ期|気持ちを認めて行動を止める
育児で最も悩みが増えるのが2歳前後のイヤイヤ期。
何を言っても「イヤ!」、思い通りにいかず床に寝転がる・・・そんな日々に疲れ切っている方も多いはずです。
イヤイヤは脳の発達の証拠
まず知っておきたいのは、イヤイヤ期は健全な成長の証だということ。
この時期の子どもは、言葉を理解はしていても、まだ自分の行動をコントロールすることができません。
これは、理性を司る脳(前頭前野)がまだ発達していないからだと言われており、「言ってることは分かるけど、言うことを聞けない」という時期なのです。
「うちの子だけ手がかかる」のではなく、すべての2歳児がそうなのです。
この事実を知るだけで、肩の力がふっと抜けますね。
気持ちを認めてから行動を止める
イヤイヤ期の対応の鉄則は、「子どもの気持ちは認めつつ、いけない行動は物理的に止める」というアプローチです。
おもちゃを取り合って遊び相手をたたいてしまったときは、「おもちゃが欲しかったんだね」という気持ちは認めつつ、「でもたたいたらいけないよ」と、抱っこして相手から物理的に離します。
2歳児に響く「心に響くフレーズ集」
- 「いやだったんだね」(共感ファースト)
- 「やりたかったね、でもね・・・」(受け止めてから伝える)
- 「赤と青、どっちにする?」(選択肢で自己決定感を)
- 「お片づけ、ママとどっちが早いかな?」(遊びに変換)
- 「あと3回ね、いち、にぃ、さん」(見通しを持たせる)
3歳児への伝え方|理由を添えて伝える
言葉が達者になってくる3歳児には、これまでとは少し違ったアプローチが効果的になります。「なぜダメなのか」を伝えられるようになる時期です。
「〇〇したら△△だよ」で理由を添える
3歳クラスの子どもたちへの有効的な叱り方は「○したら△だよ」と叱っている理由をきちんと話すことです。
3歳クラスの子どもたちになると言葉での説明で危険なことや悪いことが少しずつ理解できるようになってきます。「走ると転ぶよ」「投げると壊れるよ」のように、行動と結果をセットで伝えましょう。
理由を添える「しつけ」が基本
育児の専門家である原坂一郎氏によれば、「しつけ」とは、してはいけないことを「0歳のころから」「普通の言い方で」、「繰り返し伝えること・教えること」であり、もうひとつ大切なのは「理由を添えて言う」ことです。「食事をするところだから」とか「落ちたらけがをするから」など、短くてもいいのでその理由を添えて言うようにすると、子どもの理解力がつくにつれ、子ども自身がその理由に納得し、改めるようになっていきます。
3歳児に響く「心に響くフレーズ集」
- 「お外は車が来るから、手をつなごうね」
- 「お友だちもいたかったって。どうしようか?」
- 「大きな声を出すと、みんなびっくりしちゃうよ」
- 「ご飯のあとならアイスを食べていいよ」(条件提示)
- 「自分で考えてごらん。どうしたらいいかな?」
「ダメ」を「〇〇しようね」に変換するだけで、子どもは「次にどうすればいいか」を学べるようになります。
感情的に怒らないための親のセルフケア
「頭では分かっているのに、つい怒鳴ってしまう」のは親であれば誰もが経験することです。
大切なのは、自分自身を責めないこと。
そして、感情の波と上手に付き合う方法を持つことです。
カッとなったら6秒ルール
怒りの感情のピークは6秒間といわれています。
イラッとした瞬間に「6秒だけ深呼吸する」習慣をつけるだけで、衝動的に怒鳴ることを防げます。
その場を離れて水を一杯飲むのも効果的です。
叱り続けることのリスクを知る
臨床心理士の村中直人氏は、叱られた子どもは強い圧を感じ、神経科学的にはストレスフルな状況になり、ネガティブな感情に支配されて脳の機能を一時的に低下させてしまうため、自分で判断したり、考えたりする力を失った状態になってしまうと指摘しています。
叱り続けることは、子どもの「考える力」を奪ってしまうのです。
失敗してもリカバリーできる
時には、つい良くない叱り方をしてしまって、反省することもあるかもしれません。
自分の失敗を反省し、次はもっと良い関わり方をしようと、親が頑張っている姿そのものが、子どもにとってとても良い影響があります。
最初から完璧な叱り方ができなくても大丈夫。
怒ってしまったあとは「さっきはごめんね、大きな声を出してびっくりしたよね」と素直に伝えれば、信頼関係はむしろ深まります。
「叱る」を「伝える」に変える声かけ変換表
毎日の生活でよく遭遇するシーン別に、NGワードを心に響くフレーズに変換する具体例をまとめました。
今日からそのまま使えるフレーズ集です。
日常シーン別フレーズ変換表
| シーン | NGワード | 心に響くフレーズ |
|---|---|---|
| 走り回る | 走っちゃダメ! | 歩こうね |
| 食事中遊ぶ | 遊ばないで早く食べて! | もぐもぐタイムだよ |
| お友だちを叩いた | 叩いちゃダメでしょ! | イヤだったんだね、でも痛い痛いはやめようね |
| おもちゃを片づけない | 片づけないなら捨てるよ! | ママとどっちが早く片づけられるかな? |
| 大声を出す | うるさい! | 小さな声でお話ししてみよう |
| 登ってはいけない場所 | 降りなさい! | 落ちたらケガするよ、手をつないで降りよう |
「Iメッセージ」で気持ちを伝える
「あなたは〇〇」(Youメッセージ)ではなく、「ママは〇〇と感じる」(Iメッセージ)で伝えると、子どもは責められた気持ちにならず素直に受け止められます。
たとえば「うるさいよ!」ではなく「大きな声だとママの耳が痛くなっちゃうな」と伝えるだけで、子どもの反応は驚くほど変わります。
褒めとセットで終わらせる
叱りっぱなしを止め、改善したら褒めることを徹底しましょう。
小さい子どもなら、抱きしめてあげると喜びます。
子どもは保護者の方から認められること、愛情を実感することで自己肯定感が高まります。
叱ったあとは必ずスキンシップとポジティブな言葉で締めくくることを習慣にしましょう。
叱る前に試したい3つのアプローチ
そもそも「叱る場面」を減らすことができれば、親も子どもも穏やかに過ごせます。
ここでは叱る前に試したい先回りの工夫を紹介します。
1.環境を整える「予防的しつけ」
触ってほしくないリモコンや化粧品は手の届かない場所へ。
ぶつかると危ない家具の角にはコーナーガードを。
「叱らなくていい環境」を作ることが、最大の叱り方改革です。
2.選択肢を与えて自己決定感を育てる
「お風呂入りなさい!」ではなく「お風呂、アヒルさんと入る?それともワニさんと入る?」のように、選択肢を提示すると子どもは「自分で決めた」と感じて行動しやすくなります。
これはイヤイヤ期に特に効果的です。
3.見通しを持たせる事前予告
遊びを切り上げてほしいとき、いきなり「終わりだよ!」と言うのではなく、「あと5分で帰るよ」「次でおしまいね」と予告するだけで、子どもの切り替えはスムーズになります。
子どもには子どもなりの時間軸があることを尊重しましょう。
叱り方Q&A|よくある悩みに答えます
最後に、0〜3歳児を育てる親御さんからよく聞かれる質問にお答えします。
Q.夫婦で叱り方が違うのは大丈夫?
叱る基準が大きくズレていると、子どもは混乱してしまいます。
同じことをしても叱られないことがあると子どもは混乱します。
前回は叱られたのに、今回は叱られなかった、となるとそれが良いことなのか悪いことなのかを学ぶことができません。
叱ることに一貫性を持たせるというのは大切なポイントです。
夫婦で「これだけは譲れない」という最低限のルールを話し合っておきましょう。
Q.祖父母が甘やかすのが気になります
祖父母世代と価値観が違うのは自然なこと。
命に関わることや人を傷つけることは譲らず、それ以外は「たまにだから」と割り切る柔軟さも大切です。
Q.外出先で大声で泣かれたら?
周囲の目が気になって焦ってしまいますが、慌てて怒鳴るほど逆効果に。
可能であれば一度静かな場所に移動し、抱きしめながら「びっくりしたね、悲しかったね」と気持ちを受け止めましょう。
公共の場での子どもの泣き声に厳しい視線を感じても、子どもの気持ちを優先する勇気を持ちましょう。
Q.何度言っても直らないときは?
0〜3歳の脳は、何度も繰り返すことで少しずつ学習していきます。
大切なのは、今すぐ効果が出ると期待しないことです。
今、言い続けていると、1年後2年後には必ず、実を結びます。
すぐに結果が出なくても、伝え続けることに意味があります。
まとめ|叱るより伝える育児で毎日が変わる
0〜3歳児の叱り方で最も大切なのは、「叱る」を「伝える」に変える視点です。
年齢に合わせた声かけのコツをおさらいしましょう。
- 0歳:環境を整えることが最優先。
命に関わる場面のみ毅然と「危ないよ」 - 1歳:短く・ゆっくり・目を見て。
代替行動を提示する - 2歳:イヤイヤ期は気持ちを認めてから。
選択肢で自己決定感を育てる - 3歳:「〇〇したら△△だよ」と理由を添える。
考える力を育てる
NGワードである人格否定、他人との比較、脅し文句、実行できない罰の宣告は避け、Iメッセージや代替行動の提示、共感の言葉を意識してみてください。
そして、もし感情的に怒ってしまった日があっても、自分を責める必要はありません。
完璧な親はどこにもいません。
子どもと一緒に親も成長していく。
そんなおおらかな気持ちで、今日から「伝える育児」をはじめてみませんか。
小さな声かけの変化が、お子さんとの毎日をもっと笑顔で満たしてくれるはずです。
