「実家が遠い」「上の子の生活を変えたくない」「住み慣れた家で出産を迎えたい」・・・さまざまな理由から、里帰りをせずに出産を選ぶご家庭が増えています。実は、里帰りをしない選択は今やまったく珍しいものではありません。里帰りをしないママは全体のおよそ半数にのぼるというデータもあり、夫婦で力を合わせて産後を乗り切るスタイルが一般的になりつつあります。
とはいえ、「周りに頼れる人がいないなかで、本当に乗り切れるの?」という不安を抱える方は少なくないでしょう。大切なのは、産後に無理をしないための準備を妊娠中にしっかり整えておくこと。そして、行政や民間のサポートを上手に組み合わせ、決して一人で抱え込まないことです。
この記事では、里帰りしない出産を選んだご家庭が産前にやっておきたい準備から、産後を楽に乗り切るためのサポート活用術まで、最新情報を交えて網羅的に解説します。読み終わるころには、不安が「これなら大丈夫」という前向きな気持ちに変わっているはずです。

里帰りしない出産が選ばれる理由
かつては「出産といえば里帰り」というイメージが根強くありましたが、近年その常識は大きく変わってきています。
実際のデータを見ても、里帰りをしないご家庭がいかに多いかがわかります。
里帰りしない人は約半数というデータ
各種の調査を見ると、里帰り出産をする人としない人はほぼ半々に分かれています。
厚生労働省の調査資料では、出産にあたって里帰りをしなかったと回答したママが48.8%にのぼっており、およそ半数のママが里帰りをせずに自宅で産後を過ごしていることがわかります。
つまり、里帰りをしない選択は決して「特別なこと」ではありません。
同じ状況で前向きに育児を楽しんでいる先輩ママ・パパがたくさんいる、ということを覚えておくと心強いですね。
里帰りしない背景にある社会の変化
里帰りをしない家庭が増えている背景には、いくつかの社会的な変化があります。
助産師など専門家の見解によると、実家の両親の高齢化や、両親がまだ現役で働いているケースが増え、思うように頼れないという事情が挙げられています。
共働き夫婦の増加や、男性の育休取得が推奨されるようになったことも、夫婦で産後を乗り切るスタイルが選ばれる大きな後押しになっています。
里帰りしないことで得られるメリット
里帰りをしない選択には、見過ごせないメリットもたくさんあります。
主なものを整理してみましょう。
- 慣れた病院で出産できる:妊娠初期から同じ病院・先生にお世話になりながら出産を迎えられる安心感があります。
- 長距離移動のリスクを避けられる:妊婦さんや新生児にとって長時間の移動は負担が大きく、感染症のリスクも伴います。
これを回避できます。 - 夫婦で一緒に育児をスタートできる:新生児期から夫婦そろって育児に向き合うことで、パパも自然と育児スキルを身につけられます。
- 環境の変化によるストレスがない:住み慣れた自宅で過ごせるため、生活リズムを崩さずに済みます。
特に「夫婦で協力して育てた」という実感は、里帰りしないからこそ得られる大きな財産です。
先輩ママの体験談でも、夫婦2人で一生懸命取り組んだ結果、パパが一人でも子どものお世話を完璧にこなせるようになったという声が見られます。
これは家族にとって何にも代えがたい宝物になりますね。
産後に直面しやすい大変なこと
メリットがある一方で、里帰りをしない場合に直面しやすい大変さも、あらかじめ知っておくことが大切です。
事前に把握しておけば、対策を立てやすくなります。
産褥期のママの体調回復が最優先
出産直後の体は、想像以上にデリケートな状態です。
退院直後はまだ体が回復しきっておらず、無理な過ごし方をすると回復が遅れてしまう恐れがあります。
産後すぐは横になって過ごすことを基本とし、家事は思い切って後回しにする勇気が必要です。
自宅にいるとつい「いつものペースで動きたい」と思ってしまい、家事を優先してしまう人が多いのも、里帰りしない場合の落とし穴です。
体を休めることを最優先に考えましょう。
ワンオペになりやすい時間帯への備え
パパが仕事に出ている日中などは、ママひとりで赤ちゃんのお世話をする「ワンオペ」の時間が生まれやすくなります。
先輩ママの体験談でも、常に睡眠不足のなか、家事まで手が回らずに追い詰められてしまったという声があります。
だからこそ、家のことはできるだけ夫に任せ、「家事が完璧にできなくても気にしない」という割り切りが大切になります。

上の子のケアと赤ちゃん返りへの対応
上のお子さんがいる場合は、上の子が親と向き合いたいときに大人の手が足りなくなることがあります。
新しいきょうだいの誕生で上の子が赤ちゃん返りをすることもありますが、これは成長の過程で必ず落ち着くものなので、過度に心配する必要はありません。
事前に夫婦で対応を話し合い、上の子のかかりつけ医や病児保育の情報を確認しておくと安心です。
妊娠中にしておきたい事前準備
里帰りしない出産を成功させる最大のカギは、産前の準備にあります。
産後は時間も体力も限られるため、できることはすべて妊娠中に済ませておきましょう。
夫婦で役割分担を話し合う
最も重要なのが、夫婦での事前の話し合いです。
パパの育休が取得できるか、取得できる場合のサポート内容、難しい場合は誰に頼るのかを、妊娠中のうちに具体的に決めておくことが、産後の負担を大きく左右します。
出産時や産後に「これはどこ?」「どうやるの?」と一つひとつ教えていると、ママのストレスになってしまいます。
ゴミ出しの曜日、洗濯機の使い方、おむつのストック場所などを夫婦で共有しておくと、産後にスムーズに家事を分担できます。
陣痛・破水時の段取りを決めておく
里帰りをしない場合、ママが一人でいるときに陣痛や破水が起こる可能性も十分に考えられます。
慌てずに済むよう、あらかじめ陣痛タクシーに登録しておくことを強くおすすめします。
陣痛タクシーは対応できるタクシーを優先的に配車してくれるうえ、破水に備えてバスタオルや防水シートを準備してくれているため、安心して乗ることができます。
ベビー用品はレンタルも賢く活用
出産準備品はそろえるものがたくさんあり、なかには使う期間が短いものや、大きくて収納・処分に困るものもあります。
ベビーベッドやベビーバス、新生児期しか使わない肌着類などは、購入だけでなくレンタルも選択肢に入れると、費用も収納スペースも節約できます。
食材・日用品のストックと宅配の準備
産後すぐに買い物に出かけるのは現実的ではありません。
日持ちする食材や冷凍食品、おむつ・おしりふきなどの消耗品は、妊娠中に多めにストックしておきましょう。
あわせて、ネットスーパーや食材宅配サービスの会員登録を済ませ、注文方法に慣れておくと、産後にすぐ活用できます。
使える自治体の産後ケア事業
里帰りしない出産を乗り切るうえで、まずチェックしたいのが自治体の支援サービスです。
近年、行政の産後サポートは大きく拡充されており、知らないと損をする制度がたくさんあります。
産後ケア事業の3つのタイプ
産後ケア事業は、出産後1年以内の母子を対象に、退院直後の心身のケアや育児のサポートを行う公的な事業です。
助産師や看護師などの専門職が配置されており、主に次の3つの形態で提供されています。
- 宿泊型(ショートステイ):病院や助産所に宿泊しながら、休養とケアを受けられるタイプ。
- デイサービス型(通所型・日帰り型):施設に日中通って、ケアや育児相談を受けられるタイプ。
- アウトリーチ型(訪問型):助産師などが自宅を訪問してケアを行うタイプ。
受けられる支援は、授乳や乳房のケア、抱き方・沐浴・おむつ交換などの育児手技の指導、産後の体調管理、子育ての相談など多岐にわたります。「授乳がうまくいかない」「泣いたときにどうしていいかわからない」といった日々の不安を、専門家にじっくり相談できる心強い制度です。
母子保健法の改正で全国に拡大中
産後ケア事業は、ここ数年で急速に整備が進んでいます。
令和5年には全国1,547の自治体が実施し、実施率は89.5%に達しています。
さらに令和7年4月に施行された改正子ども・子育て支援法により、産後ケアは位置づけがより明確になり、産後ケアを必要とするすべての人が対象となる「ユニバーサルサービス」であることが打ち出されました。
こども家庭庁は自治体への補助上限を撤廃するなど、制度の後押しを強めています。
一方で、20〜30代女性の約45.5%が産後ケア事業を知らないという調査結果もあり、まだまだ認知度が課題となっています。
知っているだけで産後がぐっと楽になる制度なので、ぜひ早めに情報を集めておきましょう。

申請は妊娠中の早めがおすすめ
産後ケア事業を利用するには、原則として妊娠中に居住している自治体の窓口で申請する必要があります。
利用日数には上限があり、1回の出産につき7日までが目安(多胎の場合は10日まで)とされている自治体が一般的です。
自己負担額は所得区分や自治体の補助によって異なりますが、数千円程度に抑えられているケースも多くあります。
なお、自治体によっては制度がさらに使いやすく改善されています。
たとえば一部の自治体では、令和8年度(2026年度)以降、宿泊型・通所型・訪問型のすべてを1枚の利用券で利用できるよう手続きが簡略化されるなど、利便性向上の動きが進んでいます。
お住まいの自治体の最新情報を必ず確認しましょう。
詳しくは、お住まいの市区町村の公式サイトや、こども家庭庁の情報をご覧ください(こども家庭庁 公式サイト)。
民間サポートで産後をもっと楽に
行政のサービスに加えて、民間のサポートを組み合わせることで、産後の負担はさらに軽くなります。「これくらい自分でできるはず」と頑張りすぎず、使えるものはどんどん頼りましょう。
家事代行・産後ドゥーラの活用
掃除・洗濯・食事の準備といった家事を代わりに担ってくれる家事代行サービスは、産後の強い味方です。
また、産前産後の家庭を専門的にサポートする「産後ドゥーラ」という専門家もいます。
産後ドゥーラは家事だけでなく、上の子のケアやママの話し相手になってくれるなど、産後の暮らし全体を支えてくれる存在です。
自治体によっては、委託したヘルパーが自宅を訪問して掃除・洗濯・食事の準備や上の子の見守りをしてくれる「産前産後ヘルパー」制度を設けている場合もあります。「赤ちゃんのお世話以外を少し手伝ってほしい」というときに役立ちます。
食材宅配・ミールキットで食事の負担減
産後は栄養のある食事をとりたい一方で、料理に時間をかける余裕はなかなかありません。
食材宅配やミールキット、冷凍宅配弁当を活用すれば、買い物の手間も調理の負担も大幅にカットできます。
妊娠中にいくつか試して、自分に合うサービスを見つけておくと安心です。
産後ケアホテルという新しい選択肢
近年は、民間の産後ケアホテルやケア施設も増えてきています。
従来は1泊4万円〜8万円程度の高価格帯が主流でしたが、2025年12月には鉄道会社と助産師の会社が連携し、ビジネスホテルを活用した1泊2万5000円台の選択型産後ケアの実証事業を発表するなど、より手の届きやすい価格帯のサービスも登場し始めています。
家族も同宿できる設計のものもあり、選択肢は確実に広がっています。
近くの人とつながり孤立を防ぐ
里帰りをしない産後で最も避けたいのが「孤立」です。
自宅で過ごすからこそ、意識的に外とのつながりをつくっておくことが、心の余裕を生み出します。
夫以外の頼れる人をリストアップ
パパが仕事などでサポートできない時間帯に備えて、親や兄弟、近所の人、ママ友など、頼れる人をあらかじめリストアップしておきましょう。
実母が泊まりで手伝いに来てくれる場合は、慣れない場所での生活や気疲れに配慮し、感謝の気持ちをしっかり伝えることも忘れずに。
後日、回復してから食事の機会を設けたり、元気に成長した孫の姿を見せたりするのも素敵なお礼の形です。
地域とつながるメリット
自宅で産前産後を過ごすことは、地域とつながる絶好の機会でもあります。
夫婦だけで頑張るのではなく、地域や支援先と主体的につながることが孤立の予防になります。
子どもの顔を知っている人が一人でも多くいることは、災害時などいざというときの安心にもつながります。
地域の子育て支援センターや児童館に足を運んでみると、同じ月齢の赤ちゃんを持つママ・パパとの出会いも生まれます。
上の子の生活リズムは変えない工夫を
上のお子さんがいる場合は、保育園や幼稚園を続けることで、上の子の生活リズムを維持しやすくなります。
保育のプロに上の子を預けている間、ママは赤ちゃんのお世話に集中できる時間も確保できます。
新しい環境をポジティブに受け止めてもらえるよう、上の子との日々のスキンシップや会話の時間を大切にしてあげましょう。
産後の心と体を守るポイント
準備とサポート体制が整ったら、あとは産後をどう過ごすかが大切です。
心と体を守るための心構えをおさえておきましょう。
「完璧」を手放す勇気
産後は、家事が行き届かないのが当たり前です。
先輩ママの多くが「全部やろうとせず、できないことは諦める」ことで乗り切っています。
部屋が散らかっていても、食事が惣菜やレトルトでも、赤ちゃんとママが元気ならそれで十分です。
「完璧な母親」を目指すのではなく、「無理をしない母親」を目指しましょう。
SOSのサインを見逃さない
産後は心身ともに不安定になりやすい時期です。
気持ちが沈む、涙が止まらない、眠れないといった状態が続くときは、一人で抱え込まないでください。
産後ケア事業の相談窓口や、自治体の保健師、かかりつけの産婦人科に早めに相談することが大切です。
専門家に頼ることは、決して恥ずかしいことではありません。
赤ちゃんとの時間を楽しむために
サポートを上手に組み合わせれば、里帰りしない産後は「我慢して耐える期間」ではなく、「赤ちゃんとの暮らしを夫婦で育む時間」になります。
新生児期はあっという間に過ぎていきます。
手を借りられるところはしっかり借りて生まれた余裕を、ぜひ赤ちゃんを見つめる時間や、その小さな成長に気づく時間に使ってください。
それこそが、育児を心から楽しむ第一歩です。
まとめ
里帰りしない出産は、今やおよそ半数のご家庭が選ぶ、ごく一般的なスタイルです。
成功のカギは、妊娠中の事前準備と、行政・民間のサポートを組み合わせて一人で抱え込まないことに尽きます。
夫婦での役割分担や陣痛時の段取りを決め、ベビー用品や食材をそろえておく。
そして、自治体の産後ケア事業や家事代行、食材宅配などを賢く活用する。
これらを妊娠中に整えておけば、産後の不安はぐっと小さくなります。
産後ケア事業のように、知っているだけで産後がぐっと楽になる制度も年々充実しています。
お住まいの自治体の最新情報をぜひ早めにチェックしてみてください。
完璧を目指さず、頼れるものには遠慮なく頼りながら、赤ちゃんとの新しい暮らしを夫婦で楽しんでいきましょう。
あなたの産後が、笑顔あふれる温かい時間になることを心から願っています。
