「うちの子、いつになったら『ママ』って呼んでくれるのかな?」「同じ月齢の子はもう単語を話しているのに・・・」1歳前後のお子さんを育てていると、言葉の発達は親御さんにとって最も気になるテーマの一つではないでしょうか。
1歳は喃語から意味のある単語へと移行していく、人生で最も劇的に言語が芽生える時期です。とはいえ発達のスピードには大きな個人差があり、焦りすぎる必要はありません。大切なのは、お子さんのペースを理解しながら、毎日の関わりの中で「話したい!」という気持ちの芽を育ててあげることです。
この記事では、厚生労働省の調査データをもとにした月齢別の発達目安から、話せるようになるための具体的な関わり方アイデア、絵本や遊びの選び方、健診でのチェックポイント、相談先まで徹底的に解説します。読み終わった頃には、お子さんとのおしゃべりタイムがもっと楽しみになるはずです。

1歳の言葉の発達目安を月齢別に解説
1歳といっても、1歳になりたての子と1歳11ヶ月の子では、言葉の発達に大きな差があります。
まずは厚生労働省が公表している全国規模の調査データをもとに、月齢ごとの目安を確認していきましょう。
1歳0ヶ月〜1歳3ヶ月:単語が出始める時期
厚生労働省「乳幼児身体発育調査」のデータによれば、1歳0ヶ月から1ヶ月未満で約57.6%の子どもが単語を話し始めているとされています。「マンマ」「ブーブー」など、意味のある言葉のような響きを持つ音(初語)が出始めるお子さまもいます。
この時期は、まだ言葉として明確でなくても、「バイバイ」と促すと手を振ったり、「ちょうだい」と言うと持っているものを渡そうとしたりする姿が見られます。
言葉だけでなく、身振りや指さしを使ったコミュニケーションが活発になるのもこの時期の特徴です。
発語がなくても「理解している」サインが見えれば、言葉の土台は順調に育っています。
1歳4ヶ月〜1歳6ヶ月:単語数が増える時期
1歳半に近づくにつれ、話せる単語が一気に増えていきます。
1歳5ヶ月から6ヶ月では89.1%の子どもが単語を話し始めるという結果が報告されています。
1歳6〜7ヶ月には1語以上の単語を話す乳幼児は94.1%を占めています。
ものに名前があることを理解し始め、知っているものを指さして「あっ!」「これ!」と伝えようとする姿もよく見られます。
この「指さし」は言葉と同じくらい重要なコミュニケーションのサインです。
1歳7ヶ月〜1歳11ヶ月:二語文への移行期
1歳後半になると、単語をつなげた二語文が登場し始めます。
1歳の終わりからは、2〜3語の単語を使って話し始めます。「まんま、たべる」「ママ、だっこ」と複数の単語を組み合わせて、次第に長い文章を話すようになります。
1歳半から2歳半にかけて語彙が急激に増えます。
単語を50個ほど喋ることができるようになってくると、『モノには名前がある』という理解が進み、2歳で語彙数は200ほどになるといわれており、この時期は語彙爆発の入り口にあたります。
1歳児の言葉の発達に個人差がある理由
「同じ月齢なのに、なぜうちの子は遅いの?」と感じるのは、決してあなただけではありません。
言葉の発達には、いくつもの要因が複雑に絡み合っています。
性格・気質による違い
差が出る理由は、兄弟姉妹がいて家庭内に言葉があふれている、人の話す声や物の音を聞く耳、声を出す口などからだの器官が発達してきた、などさまざま。
なんでもやりたがるタイプ、何をやるにしても慎重なタイプなど子ども自身の気質も関係するようです。
慎重派の子は、頭の中で「言葉のストック」を十分にためてから一気に話し出すこともあります。
口や舌の発達の度合い
言葉は「考える力」だけでなく「話す力=口腔機能」も必要です。
赤ちゃんが発語するためには聴力や知能の発達のほかに、口や舌など口周りの筋力が必要です。
離乳食をしっかり噛んで食べる経験や、ストロー・コップ飲みなども、結果的に発語の土台づくりにつながります。
環境による影響
お子さまが言葉を発していなくても、大人の話すことをわかっていることもあります。
例えば、食事中に「おいしいね」と話しかけるとうなずいたり、「テレビの前にあるボールを取ってちょうだい」と言うと行動したりするのは、その言葉の意味を理解しているから。
理解(受容言語)は、表出(発語)より先に育つのが普通です。
言葉の発達を促す関わり方の基本
「たくさん話しかければいい」とよく言われますが、実は質も大切です。
研究で効果が示されている関わり方を紹介します。

マザリーズ(赤ちゃん向けの話し方)を意識する
普段よりやや高めのピッチで、ゆっくり、はっきり、大きく抑揚をつけて語りかける「マザリーズ」と呼ばれる話し方がよい刺激になるのではないでしょうか。
赤ちゃんの同期的な反応を促し、親子の共感力を高め、信頼関係構築につながると考えられています。
赤ちゃん言葉に抵抗がある方も、無理に大人の言葉で話す必要はなく、抑揚と高めの声を意識するだけで十分効果的です。
「子どもに向けて」話しかけることが鍵
過去に公表されたシカゴ大学の研究では、2歳6カ月時の「子どもに向けて発せられた言葉」が、3歳6カ月時の子どもの語彙数に影響しているという結果が示されました。
しかし、「子どもの周囲で話された言葉の数」に有意性は見られず、子どもに向かって語りかけることの重要性が強調されています。
つまり、テレビをつけっぱなしにしたり、大人同士の会話を聞かせるだけでは効果は薄いということ。
お子さんの目を見て、お子さんに向かって話しかける時間を意識的に作ることが何より大切です。
実況中継で語彙のシャワーを浴びせる
赤ちゃんの行動を「今、○○しているね」と実況中継することも効果的です。
赤ちゃんに近づいて、ゆっくりとはっきり話してあげましょう。「お水をコップに注ぐね」「靴下を履こうね」など、行動ひとつひとつを言葉にすると、生活の中の語彙が自然に増えていきます。
「意味のある語りかけ」を増やす
「楽しかったね」「お花がきれいだね」「お散歩に行こうか」「痛かったね」など、これからする行動、今見ているもの、今感じていることなどを言葉にして声に出す「意味のある語りかけ」を増やすことを重要視する声もあります。
気持ちを言葉にして返してあげることで、お子さんは「自分の気持ちには名前があるんだ」と知っていきます。
絵本の読み聞かせで言葉を伸ばすコツ
絵本は1歳児の言葉の発達にとって、最高のパートナーです。
ただ読むだけではない、効果的な読み方のコツを紹介します。
繰り返しのリズムがある絵本を選ぶ
1歳児は、リズミカルで繰り返しのある言葉が大好きです。
保育の現場でも、「いろいろばあ」「だるまさんシリーズ」などの繰り返しのある絵本が、言葉と意味を結びつける教材として活用されています。「もう一回!」とせがまれたら、それは脳が「もっと吸収したい」と言っているサインです。
指さしながら読むと語彙が伸びる
絵本を指さしながら「○○してるね」「たのしそうだね」などと話しかけながらおこなうことで、赤ちゃんが言葉の意味を学び、語彙力を伸ばしていくことができます。「これ何かな?」「ワンワンだね」と一方的に読むのではなく、双方向のやり取りに変えるイメージです。
同じ絵本を何度も読むことに価値がある
大人は「飽きないかな」と思いがちですが、繰り返し同じ絵本を読むことで、お子さんは予測しながら言葉を覚えていきます。
次に来る言葉を先取りして口にしようとする姿も見られるようになります。
言葉を引き出す遊びとアイデア集
遊びの中で自然に発語を促せると、お子さんも親御さんも楽しく続けられます。
今日から取り入れられるアイデアをまとめました。
歌・手遊びでリズムから言葉へ
童謡は、シンプルなメロディーとリズムで構成されています。
童謡の音階は人が話すような音階でつくられたものが多くて赤ちゃんにとってとてもなじみやすい音楽となっています。
なじみやすい歌のリズムに乗せて赤ちゃんは言葉を覚えられるのです。「いないいないばあ」「あたまかたひざポン」など、体の動きと歌詞が連動するものは特におすすめです。
口や舌を鍛える「吹く」遊び
発語には口腔機能の発達が欠かせません。
言葉を話すには、息を吐きながら声を発する必要があります。
吹くおもちゃは、口周りの筋肉や肺活量を鍛え、息をコントロールする練習に適しているほか、滑舌の向上効果が期待できるといわれています。
シャボン玉、ラッパ、吹き戻しなど、楽しみながら口の筋肉が鍛えられる遊びを取り入れてみましょう。

「ちょうだい・どうぞ」のやり取り遊び
身振りと言葉をセットにしたやり取りは、コミュニケーションの基礎を育みます。
身振り手振りも合わせて、大人が赤ちゃん相手に話しかけ「ちょうだい」→「どうぞ」→「ありがとう」と繰り返す遊びは、言葉と動作の結びつきを学べる優れた方法です。
要求を「言葉にする機会」をつくる
注意したいのは、子どもが何か言う前に親が先回りしすぎないこと。
おもちゃを取りたそうにしているときに、「おもちゃが取りたいんだね」と言って、赤ちゃんが言葉を発する前におもちゃを渡してしまうと、言葉にしなくても要求が叶ってしまいます。
そうすると赤ちゃんが言葉で伝える機会が減り、言葉で伝える必要性も感じにくくなってしまいます。
「なにがほしいの?」「どっち?」と少しだけ間を取って、お子さん自身が伝えようとする時間を作ってあげましょう。
1歳半健診で見られる言葉のチェック項目
多くの自治体で実施される1歳6ヶ月健診は、言葉の発達を確認する大切な機会です。
何が見られるのかを事前に知っておくと安心です。
母子手帳の保護者記入欄に注目
母子手帳には1歳6ヶ月頃のチェック項目があり、「ママ、ブーブーなど意味のある言葉をいくつか話しますか」「後ろから名前を呼んだ時、振り向きますか」「あなたの言うことや指示(例:○○を持ってきて、○○をないないして、など)がわかっていますか」といった内容が含まれています。
日頃の様子を思い出しながらチェックしてみましょう。
指さしと単語が主なチェックポイント
1歳6か月健診では、身長や歯の本数などの体の発育のほか、発語に関する検査が行われることが一般的です。
具体的には「ママ」や「わんわん」などの簡単な単語が言えるか、質問したものの対象物を指差しできるかなどをチェックします。
普段の様子をメモして持参するのがおすすめ
健診当日は緊張で普段通りに話せないお子さんが多いので、家での様子をメモして持参すると安心です。
普段から子どもが家で話す単語や、気になることをメモしておくと良いでしょう。
メモがあると、健診の際に受け答えできなかった時に、医師や保健師に普段の様子や出来ることを伝えやすくなります。
言葉が遅いと感じたときの考え方
「目安より遅い気がする・・・」と不安になったとき、まず知っておきたい考え方をお伝えします。
「理解」ができていれば焦らなくていい
1歳は、言葉が出ない子でも言葉の意味を理解し始める時期です。「○○を持ってきて」「バイバイして」と話しかけると、物を取ってきたり手を振ったりできるようになります。
また、話しかけるとうなずく・首を振るなど、コミュニケーションの基盤ができ始めます。
発語より先に「理解」が育つのは自然な順序であり、理解の力が育っていれば言葉も後からついてきます。
言葉以外のコミュニケーションを大切に
言葉だけがコミュニケーションではありません。
言葉はコミュニケーション手段の一つだということです。
大人であっても言葉以外にもジェスチャーや表情などさまざまな手段を使ってコミュニケーションを取ります。
指さし、表情、身振り、視線・・・お子さんの「伝えたい」気持ちを丁寧に受け止めることが、結果的に発語を促します。
比較しないことが何より大切
避けるべきことは、周りの子どもと成長を比較することです。
親も子もリラックスしてコミュニケーションを楽しめるとよいでしょう。
子どもの発達には個人差があるので、発語の成長段階や目安は、参考程度にとらえることが大切です。
SNSや育児書の情報は参考程度にして、目の前のお子さんの「昨日できなかったこと」が「今日できた」ことに目を向けてみてください。
気になるときの相談先と専門機関
不安を一人で抱え込まず、頼れる場所を知っておくと心強いものです。
地域の保健センター・子育て支援センター
最も身近な相談先が地域の保健センターです。
保健センターは地域の住民の保険や衛生を支える行政機関で、1歳半検診・3歳児検診などもおこなっています。
決まった育児相談日に窓口での相談をおこなうほか、電話相談、家庭訪問をして相談を受けることもあります。「医療機関に行くほどでは・・・」という段階でも気軽に相談できます。
かかりつけの小児科
普段の予防接種や健診でお世話になっている小児科は、お子さんの全体像を把握してくれる重要なパートナーです。
聴力や全身の発達状況も含めて確認してもらえます。
児童発達支援センターなどの専門機関
より専門的なサポートが必要な場合は、児童発達支援センターや療育機関に繋がる選択肢もあります。
早めに相談すること自体は、お子さんの可能性を広げる前向きな一歩です。「相談=障害を疑う」ことではないので、不安があれば気軽にアクセスしてみましょう。
毎日の関わりを楽しくする工夫
育児は長い旅路です。
親御さんが疲弊してしまっては、楽しい関わりは続きません。
最後に、無理なく続けるコツをお伝えします。
「ながら声かけ」でハードルを下げる
「ちゃんと向き合って話しかけなきゃ」と気負うと長続きしません。
料理しながら「お野菜切ってるよ」、洗濯物をたたみながら「これはパパのね」と、家事の手を止めずに実況するだけでも十分。
完璧な関わりよりも、短くても毎日続けられる関わりの方が、お子さんの言葉を育てます。
親自身が楽しめる絵本・歌を選ぶ
「子どものために頑張る」より「自分も好き」と思える絵本や歌の方が、自然と表情も声も豊かになります。
お子さんは親の楽しそうな雰囲気をしっかり感じ取っています。
「できた瞬間」をしっかり喜ぶ
新しい単語が出たとき、指さしができたとき、首を振って「いや」と意思表示できたとき・・・。
どれも大きな成長です。
大げさなくらい喜んで反応すると、お子さんは「伝えるって楽しい!」と感じ、もっと話したくなります。
記録を残しておくと後で宝物になる
初めて出た単語、面白い言い間違い、独特な造語・・・1歳の言葉の世界はあっという間に過ぎていきます。
スマホのメモや育児日記に残しておくと、後から振り返ったときの最高のプレゼントになります。
健診時にも役立つので一石二鳥です。
まとめ:1歳の言葉の発達は親子で楽しむもの
1歳は、喃語から意味のある言葉へと大きく羽ばたく、人生で最も劇的な言語発達の時期です。
厚生労働省のデータでは1歳半までに約94%の子が単語を話し始めますが、これはあくまで目安であり、個人差は大きいことを忘れないでください。
発語を促すためにできることは、決して難しいことではありません。
マザリーズで優しく語りかけ、絵本を一緒に楽しみ、実況中継で生活に言葉を添え、お子さんの「伝えたい」を待ってあげる・・・どれも今日から始められることばかりです。
そして何より大切なのは、お子さんを他の子と比べないこと、親御さん自身が楽しむこと。
「いつ話すか」より「どんな関わりを積み重ねるか」が、お子さんの将来のコミュニケーション力の土台になります。
もし不安が強くなったら、一人で抱え込まず保健センターや小児科に気軽に相談してみてくださいね。
お子さんの初めての「ママ」「パパ」が聞ける日まで、この特別な時間を思いきり楽しんでいきましょう。
