「絵本を読み始めても途中で立ち上がってしまう」「同じ本ばかりリクエストされる」「ページをすぐめくられて最後まで読めない」・・・1歳の絵本タイムには、こんな”あるある”の悩みがつきものです。けれども、1歳という時期は、ことばの芽がぐんぐん伸び、好きなものや興味の幅が一気に広がる、絵本デビューに最高のタイミング。読み聞かせを”勉強”ではなく”楽しい遊び”として続けることで、お子さんの世界はぐっと豊かになります。
この記事では、保育士・図書館・読み聞かせアドバイザーなど信頼できる情報をもとに、1歳児への読み聞かせのコツ、つまずきがちな悩みへの対処法、そして毎日無理なく続けるためのアイデアをまるごとまとめました。「うまく読まなきゃ」というプレッシャーを手放して、親子で笑い合える絵本時間を一緒につくっていきましょう。
1歳児に読み聞かせが大切な理由
1歳は、聞こえてくることばを”音”として吸収しながら、少しずつ意味と結びつけていく特別な時期です。
この時期の読み聞かせは「学習」よりも「親子の心の交流」に大きな意味があります。
ことばと心が同時に育つ時期
個人差はあるものの、赤ちゃんが言葉を覚え出すのは1歳前後とされており、このころから赤ちゃんは短い単語を使って感情表現をするようになり、1歳半ごろから語彙を増やして短い文章を作って話し始めるのが一般的です。
つまり1歳は、ことばの世界が広がり始めるまさにスタート地点。
絵本に登場するシンプルな言葉や擬音語が、その後の語彙の土台になっていきます。
また日本語はオノマトペ(擬音語、擬態語)が豊富で、情景やものの様子を的確に表現している短い言葉がたくさんあり、語彙の少ない幼い子どもにも伝わりやすいため、乳児向けの絵本にはオノマトペが多く使われています。「もぐもぐ」「ぴょーん」「ばあ!」といった音は、1歳児の耳にすっと入り、まねしたくなる魅力に満ちています。
親子の絆と安心感を育てる時間
読み聞かせは、知育のためだけのものではありません。
読み聞かせは赤ちゃんと親のコミュニケーションの場であり、親からやさしく語りかけることで赤ちゃんは安らぎを覚え、親も赤ちゃんへの愛情を確認できる時間となります。
膝に乗せて、ぴったり寄り添って読むそのひとときが、お子さんの「自分は愛されている」という感覚=自己肯定感の根っこを育てます。
「本が好き」の入り口になる
本を身近な存在として認識させることで、将来的な読書への抵抗感を少なくすることができ、赤ちゃんが絵本の内容をわからない時期でも読み聞かせは積極的におこないましょう。
1歳のうちに「絵本=楽しい・うれしい」という記憶が積み重なると、それが一生ものの読書習慣へとつながっていきます。

1歳の発達に合った絵本の選び方
1歳といっても、1歳0か月と1歳11か月では発達の段階が大きく違います。
お子さんの「いま」に合う本を選ぶことが、読み聞かせを続ける近道です。
身近なテーマ・はっきりした絵を選ぶ
1歳を超えたあたりから赤ちゃんは簡単な物語にも反応できるようになっていき、身近なテーマを好むのは変わらないものの、リズム感やユーモアをともなったフレーズが載っている絵本をおもしろがってくれます。
食べ物・動物・乗り物・あいさつなど、毎日の生活に出てくるモチーフを描いた本がおすすめです。
1歳頃は色や形を認識できるようになってくる時期のため、見て触って楽しむ絵本を選ぶのがおすすめで、カラフルな色使いのものや動物・キャラクターが出てくる絵本には興味を持ってくれる可能性が高いです。
繰り返しとオノマトペが多い本
1歳児は同じフレーズの繰り返しが大好きです。「もこもこ」「ぴょんぴょん」「ばあ!」のような音遊びは、ことばを発したい欲求を引き出します。
繰り返し型の絵本は、子どもが次の展開を予想する楽しさも味わえるため、集中時間がまだ短い1歳児にぴったりです。
丈夫なボードブック・しかけ絵本も◎
1歳はまだ「絵本を口に入れる」「ページをぐいっと引っ張る」「破ってしまう」ことも珍しくありません。
紙が薄い絵本は指を切ったり破れたりする心配があるため、1歳前半は厚紙のボードブックや布絵本を中心に選ぶと安心です。
めくる・押す・引っ張るなどのしかけ絵本は、まだじっと聞けない子の集中力を引き出してくれる強い味方になります。
図書館や公共サービスを賢く活用
「どの本が合うかわからない」という方は、まず図書館へ。
司書さんに月齢を伝えれば、年齢に合った本を案内してもらえます。
また、自治体によっては「ブックスタート」事業として赤ちゃん健診などで絵本を無料でプレゼントしてくれる取り組みがあります。
お住まいの市区町村のホームページを確認してみましょう。
読み聞かせの基本のコツ5つ
読み方に「正解」はありませんが、押さえておくと反応がぐっと変わる基本のコツがあります。
ゆっくり・はっきり・心を込めて
絵本を読む時には、はっきり、ゆっくり、心を込めて読んであげましょう。
また、絵をじっくり見せるためにページは少しゆっくりめくるとよいでしょう。
大人がふだん話すスピードでは、1歳児にはまだ速すぎることが多いもの。「ちょっと遅いかな?」と感じるくらいでちょうどよいペースです。
絵本の文章は基本そのまま読む
絵本の読み聞かせにアドリブを入れる必要はなく、絵本はプロの手によって適切な言葉が選ばれており、読み聞かせで大切なのは子どもが自ら絵本のイメージを膨らませることであり、登場人物のセリフを変えたり必要以上に大げさに読んだりしないよう気をつけましょう。
とはいえ0〜1歳児用の絵本は「ぱくぱく」「ぎゅっ」など行動や状態を音で表したものが多く、これらの絵本に関しては音やリズムを楽しむ目的が大きいので「ぱくぱく、ぱくぱく」などと繰り返してもOKです。
抑揚は控えめに、自然体で
「声優さんのように上手に読まなきゃ」と気負う必要はありません。
読み方に強弱をつけたり感情に合わせた声色を出したりするのもよい一方で、声や動きがあまりオーバーになり過ぎると絵本の内容よりも演出の方が頭に残ってしまうので、子どもの集中力を邪魔しない程度に抑えましょう。
密着して、目線を合わせて
膝の上、添い寝、横に座る・・・どんなスタイルでもOKです。
大切なのは、お子さんが大好きなパパ・ママの体温と声を感じられること。
読み聞かせはスキンシップの時間そのものと考えると、肩の力が抜けます。
反応に応える”対話読み”を取り入れる
1歳児は指さしや「あー!」という発声で、たくさんのことを伝えてきます。
リンゴのページで指をさしたら「リンゴだね、おいしそうだね」と返す。
犬の絵で笑ったら「わんわん、いたね」と共感する。
この小さなやりとりが、ことばを引き出す最高のレッスンになります。
1歳児あるある悩みと対処法
「うちの子だけ?」と感じる悩みも、実は1歳児にはとても自然なこと。
発達のサインとして受けとめましょう。
最後まで聞いてくれない・途中で立ち上がる
東京都立図書館でも次のように案内されています。
赤ちゃんは大人に絵本を持っていくと何かしてくれることがうれしいのであって、お話を読んでもらうことが楽しいとわかるのはもう少し大きくなってから。
絵本を開いて閉じて、それだけでも赤ちゃんはうれしいので、最初から最後まで読まなくてはいけないと窮屈に考えずに、赤ちゃんの気持ちを受け入れて楽しみましょう。「全部読み切る」をゴールにしなくて大丈夫です。
同じ絵本ばかりリクエストされる
これは”飽きていない”のではなく、安心と学びのサイン。
好きな絵本を何度も読んでもらうことで子どもたちの感情は満たされ、大人にとっては展開がわかっていて飽きるかもしれませんが、子どもにとっては今後の展開を知っているからこそ面白く、繰り返し聞きたいことなのです。
リクエストにとことん応えてあげてください。
ページを勝手にめくる・先に進めたがる
1歳から2歳までの子どもは本の内容を正しく理解できるレベルにはまだ達しておらず、先にページをめくりたがるなど注意力が十分に発達していないため、子どもが先にページをめくりたがった場合も強く制止したりせず、子どもの行動も含めて一緒に楽しめるよう意識しましょう。「めくる」こと自体が立派な絵本遊びです。
絵本を破る・口に入れる
破る・舐めるは”困った行動”ではなく感覚を使った探索行動です。
叱るのではなく、ボードブックや布絵本に切り替えて環境を整えましょう。
大切な紙絵本は、もう少し落ち着いてくる1歳後半〜2歳までしまっておくのも一案です。
全然興味を示さない
無理強いはNG。
一度離れて、別の日に違うジャンルを試してみましょう。
食べ物・乗り物・動物・あいさつ・しかけ・音が出る絵本など、興味のジャンルは子どもによって本当にさまざまです。

毎日続けるためのアイデア集
「読みたい気持ちはあるのに続かない」というのが、多くのご家庭の本音。
続けるコツは”がんばらない仕組み化”です。
生活のルーティンに組み込む
絵本の時間を決めておくのがおすすめで、取り入れやすいのは寝る前の時間帯。
ごはんやお風呂を済ませた後、布団で横になって子どもの選んだ絵本を開けば、寝る前の切り替えにもなり、1日の終わりにママパパのぬくもりを感じられる幸せなひとときにもなります。「夕食後=絵本タイム」のように決めておくと、忙しい日でも自然と手が伸びます。
1日5分でも”読めた日”にカウント
「30分しっかり読まないと意味がない」と思っていませんか?ベネッセ教育情報サイトのインタビューでも、絵本未来創造機構の代表理事はフルタイム勤務でも、お風呂の前や登園前に5分あれば絵本を読むことで子どもに笑ってもらえ、それが「今日も一冊読めた」「大丈夫」という自分の肯定感につながったと語っています。
「短くてもOK」と決めることが、続けられる最大のコツです。
絵本を”目に見える場所”に置く
本棚にしまい込むより、リビングの低い棚やカゴに表紙が見えるよう並べておくのがおすすめ。
子どもが自分で手に取れる環境にしておくと、「読んで」を引き出しやすくなります。
図書館・サブスク・お下がりで負担を減らす
絵本を毎月買うのは家計にも負担です。
図書館で2週間に10冊借りる、絵本のサブスクリプションサービスを使う、フリマアプリやお下がりを活用するなど、「買わずに出会う」仕組みをつくると、新しい絵本に出会う機会がぐんと増えます。
パパ・祖父母にもバトンタッチ
読み手はママだけでなくてOK。
声が違えば子どもは新鮮に楽しんでくれます。
動画通話で離れて暮らすおじいちゃん・おばあちゃんに読んでもらうのも、特別なコミュニケーションになります。
1歳前半・後半別おすすめの絵本ジャンル
具体的な書名は好みが分かれるので、ここでは”選ぶときの軸”として図書館や保育園で長く支持されているジャンルを紹介します。
1歳前半(1歳0か月〜1歳5か月頃)
東京都立図書館でも紹介されている定番には『くだもの』平山和子作・福音館書店があり、スイカ・モモ・ブドウなど果物が次々と出てきて、「さあ、どうぞ」と呼びかけて赤ちゃんといっしょにおいしく食べて遊ぶように楽しめます。
身近なものをはっきりとした絵で描いた本は、この時期の鉄板です。
また『いないいないばあ』(文:松谷みよ子/絵:瀬川康男・童心社)は1967年の刊行以来50年以上も子どもたちの心をとらえてきた絵本で、バァやブゥなどの音を含む文章でリズムと音の楽しさを味わうことができ、『がたんごとんがたんごとん』(作:安西水丸・福音館書店)は汽車が主人公でコップやスプーンなどさまざまなものを乗せて走る話で、汽車に興味が出始める1歳前後に喜ばれます。
1歳後半(1歳6か月〜1歳11か月頃)
ことばが少しずつ出てくるこの時期は、ストーリー性のある絵本もおすすめ。
1歳半ごろからは知育絵本を取り入れるのも効果的で、ごはんや着替えといった生活習慣を楽しみながら学べる絵本によってマナーを教えてあげるのもおすすめです。「歯みがき」「トイレ」「あいさつ」など、生活と絵本がつながると、行動の切り替えもスムーズになります。
選ぶときに迷ったら”ロングセラー”を
山梨県立図書館の読み聞かせガイドでも、長く読み継がれているものや定番と言われるもの、また読み聞かせに向くブックリストなどで紹介されている絵本の中から選ぶことがすすめられています。
何十年も愛されている本には、それだけの理由があります。

読み聞かせのよくある誤解と注意点
よかれと思ってやっていることが、逆効果になっていることも。
最後に押さえておきたいポイントをまとめます。
「ゆっくり読む」だけが正解ではない
「ゆっくりはっきり」が基本ですが、絵本によってリズムは変わります。
テンポのよい絵本を間延びして読むと、せっかくの面白さが伝わらないことも。
本のリズムに合わせて自然に読むのがいちばんです。
「知育のため」と肩に力を入れすぎない
絵本の知育効果や学力の向上を期待してしまいますが、そういった考えはママ・パパの心のうちに秘めておくのが良く、読み聞かせを強制したり過度なプレッシャーを与えてしまうと子供はストレスを感じてしまうため、絵本の読み聞かせは「ただ絵本を楽しく読み聞かせる」それだけで効果が大きいので、親子のコミュニケーション、遊びの一環として取り組みましょう。
読み終わった後に感想を求めすぎない
読み聞かせのあとは大人から子どもに働きかける必要はなく、読後は子ども自身がお話を味わっている途中で、大人はつい「どう思った?」と感想を言語化させたくなりますが、子どもは感じたことをすぐに言葉で表現できるわけではなく、子どもの中で時間をかけて言葉にならない想いが消化されていきます。
1歳児ならなおさら、ただ静かに余韻に浸る時間も大切です。
スマホ・テレビは読み聞かせ中はオフに
読み聞かせ中にテレビがついていたり通知音が鳴ったりすると、1歳児の集中はあっという間にそがれてしまいます。
たった5分でも”絵本だけの時間”をつくるだけで、子どもの反応が驚くほど変わります。
“うまく読めない自分”を責めない
絵本を読んでいる途中で子どもがどこかへ行ってしまっても、それは読み手のせいではありません。
1歳児の集中力はもともと短いもの。
「今日は1ページだけ読めた」「一緒に絵を指さして笑えた」、それだけで100点満点です。
パパママ自身が楽しむことが最大のコツ
最後にいちばん大切なことを。
読み聞かせは”親が頑張るもの”ではなく、”親子で楽しむもの”です。
親が楽しむと子どもも楽しい
親が読み聞かせを楽しんでいる気持ちは赤ちゃんにも伝わるので、「子供のために良いから」という理由だけで読み聞かせを義務のようにとらえず、親自身もリラックスして楽しんでください。
お気に入りの絵本ができれば、それは親にとっても癒しの時間になります。
“続けられる量”を見極める
毎日10冊読まなくてもいい、毎日読まなくてもいい。
「明日もまた読みたいな」と思える量で止めるのが、長く続ける秘訣です。
読み聞かせのプロも口を揃えて「無理のない範囲で長く細く続ける」ことを推奨しています。
絵本タイムは”自分へのご褒美”でもある
子どもが膝の上でぴったりくっついてくれる時期は、人生のうちほんの数年。
絵本を読む時間は、ママ・パパにとっても日々の慌ただしさをリセットできる貴重なひとときです。
「子どものため」だけでなく「自分のため」と思えると、自然と続けたくなります。
まとめ|1歳の絵本タイムを”親子の宝物”に
1歳児への読み聞かせで大切なのは、上手に読むことでも、たくさん読むことでもありません。
お子さんと笑い合い、温もりを分け合う時間そのものが、いちばんの贈り物になります。
本記事のポイントを振り返ります。
- 1歳はことばと心が同時に育つ大切な時期。
読み聞かせは知育以上に「親子の絆」を育む - 絵本選びは「身近なテーマ」「はっきりした絵」「繰り返し」「丈夫な作り」の4軸で
- 読み方は「ゆっくり・はっきり・自然体」で十分。
アドリブや過剰演出は不要 - 「最後まで聞かない」「同じ本ばかり」「ページをめくる」はすべて1歳児の正常な姿
- 続けるコツは生活ルーティンへの組み込みと、図書館・サブスクなど”買わずに出会う”仕組み
- 親自身が楽しむことが、子どもの「絵本好き」を育てる最大の近道
今日の絵本タイムは、たった1冊・たった3分でも大丈夫。「読めなかった日」を数えるより、「読めた日」を喜ぶ気持ちで、肩の力を抜いて続けてみてください。
1ページ1ページの積み重ねが、お子さんの心の中に”あったかい記憶”としてずっと残っていきます。
さあ、お気に入りの1冊を手に取って、今日も親子の絵本時間を楽しみましょう。
