「うちの子、いつになったら『ママ』って呼んでくれるんだろう」「周りの子はもうおしゃべりしてるのに・・・」そんなふうに、赤ちゃんの初めての言葉を心待ちにしている親御さんは多いのではないでしょうか。初めての発語は、親にとって忘れられない感動的な瞬間です。一方で、いつごろ話し始めるのか、何をすれば言葉を引き出せるのか、不安や疑問もつきものですよね。
この記事では、赤ちゃんの初語が出る時期の目安や発達のステップ、よくある初めての言葉、そして毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる関わり方のコツまで、わかりやすくまとめました。言葉の発達には大きな個人差があり、月齢の数字だけで一喜一憂する必要はありません。赤ちゃんのペースを尊重しながら、毎日のおしゃべりタイムを楽しんでいきましょう。
初めての言葉「初語」が出る時期の目安
赤ちゃんが初めて発する意味のある言葉を「初語(しょご)」と呼びます。
育児書やネット情報でさまざまな目安が紹介されていますが、信頼できるデータをもとに「いつごろが平均的なのか」を確認しておくと、過剰に焦ったり比べたりせずに済みます。

初語とは何を指すのか
初語とは、ただ音を発するだけではなく、特定の対象を指して意味を持って使う最初の言葉のことです。「ママ」「パパ」「ワンワン」など、身近な人や物を指す簡単な単語であることが多いのが特徴です。
たとえば「マンマ」と言いながら冷蔵庫を指さしたり、犬を見て「ワンワン」と言ったりする場面が初語のサインです。
単なる喃語(なんご)との違いは、「音」と「対象」がつながっているかどうか。
喃語期の「まんまん」「ぱぱぱ」は発声の練習で意味を持ちませんが、対象とつながったとき、それが初語になります。
厚生労働省データに見る発語の月齢分布
厚生労働省の「平成22年乳幼児身体発育調査」によれば、1語以上の単語を発する乳幼児の割合は生後9〜10カ月未満で9%、生後1年0〜1カ月未満で50%以上、生後1年6〜7カ月未満で90%以上となっています。
さらに細かく見ると、1歳1〜2カ月で69.9%、1歳2〜3カ月で79.1%、1歳6〜7カ月には94.1%と段階的に割合が上がります。
学術データでも、平均が12カ月台、90%の子が15カ月までに初語を話すとするデータが多く、男女差があり女児の方が早い傾向が報告されています。
つまり「1歳前後で初語、1歳半までにほとんどの子が単語を話し始める」というのが大まかな目安です。
個人差はとても大きいもの
赤ちゃんは早ければ9カ月ぐらい、遅い子は1歳6カ月ぐらいまでに話し始めることが多く、一般的には1歳前後から何らかの言葉を話し始めます。
一方で、2歳近くなって急に話し出す子もめずらしくありません。
月齢はあくまで「目安」であって「合格ライン」ではないことを心に留めておきましょう。
言葉が出るまでの発達ステップ
初語はある日突然出てくるわけではなく、生まれてから少しずつ積み上がってきた発声と理解の集大成です。
生まれた瞬間からのステップを知ると、「今この子の中で何が育っているか」がイメージできるようになります。
新生児期〜2カ月:泣き声で気持ちを表す
新生児期は声帯や口の動きがまだ未発達で、言葉として発することはできません。
生まれたばかりの赤ちゃんでも、人の声とその他の音を区別でき、母親の声も理解して反応できるとされており、「言葉のシャワー」を浴びる準備はすでに始まっています。
2〜4カ月:クーイングが始まる
機嫌のよいときに「あー」「うー」「くー」といった柔らかい母音を出すようになります。
これがクーイングと呼ばれる発声で、赤ちゃんの声帯が発達してきている証です。
親が笑顔で返事をすると、赤ちゃんも嬉しそうに発声を繰り返します。
これは会話の原型ともいえる大切なやり取りです。
5〜9カ月:喃語の世界
5〜6カ月頃から、「ぶぶぶ」「あむあむ」など子音と母音が連続する音である喃語が始まります。
やがて「まんまん」「ばばば」など同じ音を繰り返す反復喃語が登場し、赤ちゃんは自分の声で遊ぶように発声を楽しみます。
この時期、親が真似して返すことで「声を出すと応えてくれる人がいる」という体験が積み上がります。
10〜12カ月:喃語と初語の橋渡し
生後10か月を過ぎると、喃語と初語の境界が曖昧になってくる時期に入ります。「まんま」と言いながら食べ物を指さしたり、「わんわん」と言いながら犬を見たりするなど、特定の音と特定の対象を結びつける行動が見られるようになります。
この行動こそが、初語が間近に迫っているサインです。

初めての言葉に多い単語ランキング
「うちの子の初語は何になるのかな?」と想像するのも、子育ての楽しみの一つです。
研究データから、初語に選ばれやすい言葉の傾向を見てみましょう。
家族を呼ぶ言葉が圧倒的に多い
初語の研究では、家族に関するものが初語全体の50%であること、次いで食べ物に関する初語が多く、家族で最も多かったのは「ママ、マンマ(お母さん)」であり、次いで多かったのは「パパ(お父さん)」という結果が報告されています。
毎日いちばん近くで声をかけてくれる存在の名前が、自然と最初の言葉になりやすいのです。
食べ物・動物の鳴き声も人気
同じ研究によると、食べ物では「マンマ」が最も多く、擬音語では動物の鳴き声(ワンワン、ブッブーなど)が高い割合を占めました。「ワンワン」「ブーブー」のように、繰り返しの音で構成された言葉は赤ちゃんにとって発音しやすく、覚えやすい特徴があります。
初語が「複数の意味」を持つことも
初語の段階では、ひとつの言葉が複数の意味を担うことがあります。「マンマ」が食べ物全般を指したり、「ワンワン」が犬だけでなく他の動物も指したりすることがあり、これは「一語文」と呼ばれ、一つの単語で文章の役割を果たしています。「マンマ」と言いながら冷蔵庫を指せば「お腹がすいた」「あれが食べたい」というメッセージ。
赤ちゃんの気持ちをくみ取って、ぴったりの言葉で返してあげると会話が深まります。
発語を引き出す日常の関わり方
初語の出現は遺伝や個性の影響が大きいものの、毎日の関わり方によって「言葉を出したい」という気持ちを育てることはできます。
難しいテクニックは必要ありません。
大切なのは、赤ちゃんを一人の対話相手として向き合うことです。
実況中継のように話しかける
赤ちゃんはまだ話せなくても、周囲の言葉をしっかり吸収しています。
親からたくさん声をかけられて脳に溜まっていた言葉が、あるときを境に「ママ」というような言葉となってアウトプットされると考えられています。
おむつ替えなら「気持ちよくなろうね、おしりキレイキレイしようね」、お散歩なら「お花きれいだね、赤いね」など、行動や見ているものをそのまま言葉にして実況中継するだけで十分です。
無言の作業を「言葉のシャワー」に変えることが、最も手軽で効果的な関わり方です。
反応を返す「サーブ&リターン」
赤ちゃんが「あー」「うー」と声を出したら、笑顔で「あーなの?」「そうなんだね」と返してあげましょう。
赤ちゃんが少しでも音を発したら、笑顔で応えたり、優しく相づちを打ったりすると、自然と喃語が増えていきます。
応えてもらえる経験が積み上がると、「声を出すと楽しい!」と感じ、積極的に関わろうとする意欲につながるのです。
指さしに丁寧に応える
1歳前後になると赤ちゃんは盛んに指さしを始めます。
これは「あれは何?」「見て見て!」という強い伝達意欲のあらわれ。「ワンワンだね、かわいいね」と対象を言葉にして返すことで、赤ちゃんは「物には名前がある」ということを学んでいきます。
指さしに丁寧に応える積み重ねが、語彙の土台になります。
絵本の読み聞かせを取り入れる
絵本は、日常では出てこない言葉に出会える宝箱です。
0歳のうちは内容を理解できなくてもかまいません。
膝の上で一緒にページをめくり、絵を指さしながら短い言葉で語りかけるだけで、親子の安心できる時間と言葉のインプットが同時に得られます。
同じ絵本を何度も読みたがるのは、繰り返しによって言葉と意味を結びつけている最中だからです。
月齢別おすすめの遊びと声かけ
赤ちゃんの発達段階に合わせて遊びや声かけを少し変えるだけで、言葉を引き出すきっかけがぐっと増えます。
0〜6カ月:表情と声で楽しむ
この時期は「顔」と「声」が最大の刺激です。
あやし遊び、いないいないばあ、歌いかけなど、表情豊かに声をかけてあげましょう。
赤ちゃんの「あー」に「あーだね」とそっくりに返す「鏡返し」も大好評です。
発声を肯定された経験が、次の発声につながります。
7〜11カ月:物の名前を教える
物への興味が広がる時期。
離乳食では「ニンジンだよ、オレンジだね」「これはバナナ」と食材の名前を伝えたり、お風呂で体の部位を「お手てピチャピチャ」「あんよごしごし」と言葉にしたりしましょう。
短いフレーズを、ゆっくり、はっきりと繰り返すのがコツです。

1歳〜1歳半:やり取り遊びを増やす
「ちょうだい」「どうぞ」のやり取り遊びは、コミュニケーションの基本を体感できる最高の遊びです。
1歳は、言葉が出ない子でも言葉の意味を理解し始める時期です。「○○を持ってきて」「バイバイして」と話しかけると、物を取ってきたり手を振ったりできるようになります。
簡単なお手伝いをお願いして「ありがとう、助かった!」と喜びを共有するのも効果的です。
1歳半〜:語彙爆発を後押し
初語が出た後、最初の数か月は月に1〜2語程度のペースで新しい言葉を覚えますが、1歳半頃になると「語彙爆発」と呼ばれる現象が起こり、急激に語彙が増加する時期を迎える赤ちゃんもいます。
この時期は子どもの「これ何?」のサインをキャッチし、すぐに名前を教えてあげると、語彙が雪だるま式に増えていきます。
言葉の発達に必要な4つの土台
言葉を話すという行為は、実はいくつもの能力が組み合わさって初めて成立します。
土台を意識しておくと、発達を多角的に支えられます。
聴力・知能・運動機能・意欲
言語聴覚の専門家の知見によれば、子どもが言葉を話すようになる条件として、①言葉を聞き分ける『聴力』が発達していること、②言われたことが理解できる『知能』が発達していること、③発声するための『運動機能』が発達していること、④子どもに話すという『欲求』があることの4つが挙げられます。
これら4つの条件が揃ったときに、子どもは自然に言葉を発するようになります。
「話したい」という気持ちを育てる
この4つの中でも、家庭で最も大きく育てられるのが「話したい」という意欲です。
赤ちゃんが伝えたいことに親が気持ちよく応え、「伝わると嬉しい」「もっと伝えたい」という体験を積ませてあげることが、言葉の原動力になります。
テレビや動画は一方通行のため、いくら長時間流しても双方向のやり取りには代わりません。
対面で目を合わせ、応答するやり取りこそが言葉の発達に欠かせないのです。
聞こえのチェックも大切に
反応が乏しい・呼びかけに気づきにくいなど、聞こえに関する気がかりがある場合は、早めに小児科や耳鼻科に相談しましょう。
多くの自治体では新生児聴覚スクリーニング検査が行われていますが、その後の発達の中で気になるサインが出ることもあります。
聴覚は言葉の発達の入り口です。
気になることがあれば、月齢にかかわらず専門家に相談することをためらわないでください。
やってしまいがちなNG行動と心がけたいこと
よかれと思ってやっていることが、実は赤ちゃんのやる気をしぼませてしまうこともあります。
よくあるNGパターンと、代わりに心がけたい姿勢を整理してみましょう。
「言ってごらん」の強要は逆効果
「ママでしょ?ほら、言ってごらん」と発話を迫ると、赤ちゃんはプレッシャーを感じて口を閉ざしてしまうことがあります。
無理に言葉を言わせようとするのではなく、楽しみながらコミュニケーションを取ることが大切です。
話したくなる空気を作ることが、最大の近道になります。
他の子と比べない
同じ月齢の子がスラスラ話していると、つい比較してしまうのは自然な感情です。
しかし言葉の発達は4つの能力の組み合わせで決まり、性格やタイプによっても大きく差が出ます。「歩き出すのが早い子・遅い子」と同じように、「話し出すのが早い子・遅い子」がいるだけ。
他の子と比べず、わが子の昨日と今日を比べる視点が、親子両方を笑顔にします。
赤ちゃん言葉は使ってもOK
「ワンワン」「ブーブー」などの赤ちゃん言葉を使うと、後の発達に悪影響では・・・と心配する声もありますが、赤ちゃんが発音しやすい言葉から覚えていくのはむしろ自然なプロセスです。
やがて「犬」「車」と正しい言葉に置き換わっていきます。「ワンワン、いたね。大きいワンワンだね」のように、赤ちゃん言葉と一緒に通常の言葉も自然に添えるとスムーズです。
気になるときに知っておきたい相談先
「うちの子、言葉が遅いかも・・・」と感じたとき、一人で抱え込まずに頼れる場所を知っておくと安心です。
まずは目安を冷静にチェック
1歳半を過ぎてもまだ言葉が出ない場合でも、周りの音に反応したり、指さしやジェスチャーで意思を伝えていれば、言葉の発達の準備段階にいると考えられます。
逆に、2歳を過ぎても言葉が出ない、発語が極端に少ない場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
言葉以外に、「目が合いにくい」「呼んでも振り向きにくい」「指さしをしない」といったサインが重なる場合も、一度相談してみると安心材料が得られます。
1歳半健診・3歳児健診を活用
自治体が実施する乳幼児健診は、発達を客観的にチェックしてもらえる貴重な機会です。
特に1歳半健診では言葉の項目が含まれていることが多く、保健師さんに気になることを伝えやすい場面です。
健診で「もう少し様子を見ましょう」と言われた場合も、その後気になることが続けば、遠慮せず再度相談してかまいません。
専門機関に相談する
かかりつけの小児科、地域の保健センター、子育て世代包括支援センターなどが身近な相談窓口です。
必要に応じて、言語聴覚士による評価や、地域の発達相談・療育支援につないでもらえます。
早めに相談すること自体が、その後の選択肢を広げる安心材料になります。
心配な気持ちを口に出すことは、赤ちゃんにとっても親にとってもプラスです。
初めての言葉を待つ時間を楽しもう
初めての言葉が出る瞬間は、子育ての中でも特別な思い出になります。
けれど、その「瞬間」だけが特別なのではなく、そこに至るまでの毎日の声かけ、笑い合い、目を合わせた一瞬一瞬が、赤ちゃんの言葉を育てているのです。
「ことば日記」をつけてみる
赤ちゃんが新しい音や言葉を発したら、スマホのメモや育児日記に日付と一緒に残しておくのがおすすめです。
後から見返すと、「あの時こんな小さな声だったのに」「この単語、こんなに早く言えていたんだ」と、成長の足跡が宝物になります。
動画で残しておけば、おじいちゃんおばあちゃんとも喜びを共有できますね。
親自身もリラックスを大切に
「言葉を引き出さなきゃ」と力みすぎると、関わりがどこか義務的になりがちです。
親がリラックスして笑顔でいられることが、赤ちゃんにとって最高の言語環境です。
家事の合間にちょっと話しかける、お風呂で歌を歌う、それだけで十分。
完璧な育児を目指す必要はありません。
まとめ:初語は親子のコミュニケーションが結晶した瞬間
赤ちゃんの初めての言葉は、多くの場合1歳前後に登場し、1歳半ごろまでに9割以上の子が単語を話し始めます。
初語に多いのは「ママ」「パパ」「マンマ」「ワンワン」など、毎日の暮らしの中心にある言葉たち。
それは、親が日々注ぎ込んできた声かけと愛情の結晶でもあります。
発語を引き出すために特別な教材は必要ありません。
実況中継のような語りかけ、声に対する応答、指さしへの丁寧な反応、絵本の読み聞かせ、この4つを意識するだけで、赤ちゃんの中に言葉が積み重なっていきます。
月齢の目安はあくまで参考にとどめ、わが子のペースを信頼してあげましょう。
気になることがあれば、1歳半健診や地域の保健センター、小児科、言語聴覚士など、頼れる窓口はたくさんあります。
一人で抱え込まず、専門家の力を上手に借りながら、初めての言葉を待つ時間そのものを楽しんでくださいね。
赤ちゃんの「はじめてのおしゃべり」は、きっと忘れられない宝物になります。
