「最近よだれが増えてきた」「夜泣きがひどくなった」・・・もしかして、赤ちゃんの歯が生える前兆かもしれません。初めての育児では、わが子の口元に小さな白い点を見つけた瞬間の感動はひとしお。一方で「生える順番がうちの子だけ違うかも?」「いつ歯磨きを始めればいいの?」と不安になる親御さんも多いはずです。
このガイドでは、乳歯が生える時期と順番、生え始めのサイン、歯ぐずり対策、そして歯磨きデビューのコツまでをまるごと解説します。日本小児歯科学会の調査データも交えながら、育児がもっと楽しくなる情報をぎゅっと詰め込みました。赤ちゃんの「はじめての一本」を、ぜひ笑顔で迎えてあげてくださいね。

赤ちゃんの歯が生える時期の目安
赤ちゃんの乳歯は、生まれてすぐには見えませんが、実はママのお腹の中にいる頃からすでに準備が始まっています。
妊娠7〜10週頃には乳歯の芽となる「歯胚(しはい)」が形成され始め、出産後に少しずつ歯ぐきから顔を出していきます。
最初の一本は生後6〜9ヶ月が一般的
歯が生え始める時期には個人差がありますが、だいたい生後6カ月〜9カ月ころが一般的です。
多くの子の場合、まず下の前歯が2本生えてきて、次に上の前歯が2本生えてきます。
最初の歯が見えた瞬間は、まるで小さな白い宝石のよう。
スマホで何度も撮影したくなる、忘れられない瞬間です。
20本がそろうのは2歳半〜3歳頃
1歳前後になると上下それぞれもう2本ずつ増えて(乳側切歯)合計8本ほどになり、1歳半ごろには最初の奥歯(第1乳臼歯)が生えてくる子がほとんどです。
2歳前後になるとさらに前歯と奥歯の間にある歯(乳犬歯)や、奥歯(第2乳臼歯)が生えてきて、2歳半くらいで20本の乳歯が揃う子が多いとされています。
個人差はとても大きい
乳歯がはえ始める平均の時期について、2019年に報告された全国調査の結果では、1988年の調査結果と比較すると、30年前より1ヶ月ほど早くなったそうです。
でもそれは平均値のことで、はえる時期の幅はむしろ以前より広くなっていて、早くはえる子どもと遅くはえる子どもの個人差が広がっていました。
「平均より早い・遅い」に一喜一憂しなくて大丈夫。
お子さんのペースを尊重してあげましょう。
乳歯が生える順番をわかりやすく解説
乳歯は全部で20本。
生える順番にはおおまかな決まりがありますが、必ずしも教科書通りに進むわけではありません。
ここでは平均的な流れを紹介します。
下の前歯から奥歯への基本ルート
乳歯は下のあごから生え始めることが多く、最初に見られるのは通常乳中切歯(A)です。
その後、乳側切歯(B)、第一乳臼歯(D)、乳犬歯(C)、そして最後に第二乳臼歯(E)が順を追って生えてきます。
順番は前から順に生えてくるわけではないことがわかります。
意外なことに、犬歯(C)よりも奥歯(D)が先に生えてくるのがポイントです。
月齢別・生える順番の目安
以下は一般的な目安です。
あくまで参考として、お子さんの成長を温かく見守ってあげてください。
- 生後6〜9ヶ月頃:下の前歯(乳中切歯)2本/計2本
- 生後9〜11ヶ月頃:上の前歯(乳中切歯)2本/計4本
- 1歳〜1歳3ヶ月頃:上下の前歯の隣(乳側切歯)4本/計8本
- 1歳6ヶ月頃:第一乳臼歯(最初の奥歯)4本/計12本
- 1歳9ヶ月〜2歳頃:乳犬歯(前歯と奥歯の間)4本/計16本
- 2歳6ヶ月頃:第二乳臼歯(一番奥の奥歯)4本/計20本
順番が違っても基本的には大丈夫
上記の順序は平均値なので、上の前歯が先に生える子もいますし、乳犬歯が生える前に奥歯が生え揃う子もいます。
細かい順序は、そこまで重要ではなく、一歳半検診のときまでに前歯8本が、三歳児検診のときにすべての乳歯が生えている、くらいのイメージでとらえていただければ大丈夫です。
多少の順番違いは個性のひとつと考えて、気にしすぎないようにしましょう。
歯が生え始める前のサインを見逃さない
赤ちゃんは「歯が生えてきたよ」とは言葉にできません。
でも、その代わりに体や行動でたくさんのサインを送ってくれます。
代表的なサインを知っておけば、「もうすぐ歯が出るかも!」とワクワク待つことができますよ。
よだれが急に増える
生後3〜9ヶ月くらいの赤ちゃんのよだれの量が急に増えだしたら、歯が生え始めるサインです。
よだれの量が増えるのは、母乳だけではなく離乳食を摂取する準備に入ってはいるものの、まだ口を閉じて唾液を飲み込む機能が発達していないためです。
スタイ(よだれかけ)の交換が一気に増えるのもこの時期ならではです。
機嫌が悪くなる「歯ぐずり」
歯のはえ始めは歯ぐきがむずがゆく感じ、そのために赤ちゃんの機嫌が不安定になる時があります。
欧米には「teething pain」という言葉もあり、夜泣きやぐずりの原因として語られているとか。
赤ちゃんが今までにない状況でグズグズしたり、夜泣きをするようになったら、もしかするとこのムズムズが原因かもしれません。「いつもと違う泣き方」に気づいたら、口の中をのぞいてみるチャンスです。
何でも口に入れたがる
歯ぐきのむずがゆさを紛らわせるために、赤ちゃんはおもちゃ・指・タオルなどあらゆるものを口に入れて噛もうとします。
これは歯が出てくる前の典型的な行動サインです。
誤飲につながる小さなものは手の届かない場所に置き、安全な歯がためを用意してあげましょう。
歯ぐきがふくらむ・白く見える
歯が生えてくる時期が近づいたら、ときどき口の中を指でさわってみましょう。
歯ぐきにふくらみがでてきたら、生えるのが近いサインです。
歯ぐきの一部がポコッと盛り上がり、よく見ると白っぽい点が透けて見えることも。「もうすぐ会えるね」と声をかけてあげたい瞬間です。

歯ぐずりの対処法と歯固めの活用
歯が生える時期のぐずりは、親子ともに辛い時間。
でも、ちょっとした工夫で赤ちゃんの不快感はぐっと和らぎます。
ここでは家庭でできる対処法を紹介します。
冷やして気持ちよさをプレゼント
冷蔵庫で冷やしたタオル等で歯茎を拭ってあげたり、噛ませてあげたりするのがおすすめです。
また、清潔な手で、赤ちゃんの歯茎を優しく円を描くようにマッサージするのも効果的です。
腫れた歯茎を冷やすことで、熱を逃がし痛みやムズ痒さを和らげることができます。
ただし、氷など極度に冷たいものを使用すると、血流が滞り治癒の妨げになりますので注意してください。
歯固めを上手に使う
歯固めは、噛むことで歯ぐきを刺激し、むずがゆさを軽減してくれるアイテム。
シリコン製・木製・布製・保冷剤入りなど種類は豊富です。
月齢や赤ちゃんの好みに合わせて選びましょう。
使った後は必ず洗浄し、清潔に保つことが大切です。
【注意】ネックレス型やビーズ型の歯固めは窒息や首が絞まる事故のリスクが報告されています。
赤ちゃんの首にかけるタイプの使用は控えましょう。
よだれかぶれを防ぐスキンケア
よだれが増えると、口の周りやあごが赤くかぶれてしまう赤ちゃんも。
こまめに柔らかいガーゼで優しく拭き取り、保湿クリームで肌を守ってあげましょう。
ゴシゴシこすると逆効果なので、「押さえるように拭く」が鉄則です。
歯みがきはいつから始める?
「歯が生えたら虫歯対策」は育児の新しいステージ。
とはいえ、いきなりゴシゴシ磨こうとすると赤ちゃんが嫌がってしまうことも。
段階を踏んで、楽しく習慣化していきましょう。
歯が生える前からスタートできる口腔ケア
歯が生える前でも、ガーゼで口の中を清潔にすることが大切です。
1日1回、食後や寝る前に、ぬるま湯で湿らせたガーゼやシリコン製の指サックを使い、歯茎を軽く拭いてあげます。
これにより、口の中の汚れを落とすだけでなく、歯磨きの習慣付けにもつながります。
最初の一本が生えたら歯ブラシデビュー
歯が1本でも生えてきたら、赤ちゃん用の歯ブラシにチャレンジしてみましょう。
離乳食を口にすることも多くなるので、歯が生え始めたら、赤ちゃん用の歯ブラシを使ってやさしく磨いていきます。
最初は歯ブラシに慣れることが目的なので、1日1回、夜寝る前に軽く歯をなでる程度で大丈夫です。
赤ちゃんが嫌がる場合は、無理をせずガーゼで拭く方法を併用しながら慣らしていきましょう。
「歯ブラシ=楽しい時間」と感じてもらうことが、将来の歯磨き習慣の土台になります。
仕上げみがきは大人の役割
赤ちゃんが自分で口を触られることに慣れてきたら、寝かせて上から覗き込む「ひざのせポジション」で仕上げみがきを。
歌を歌ったり、絵本のキャラクターの話をしたりしながら行うと、楽しい習慣として定着していきます。
前歯の表面と歯と歯ぐきの境目をやさしくなでるように、力を入れすぎないのがコツです。
生え始めの歯を虫歯から守るコツ
生えたての乳歯は、見た目はピカピカでも実はとてもデリケート。
エナメル質が薄く、虫歯になりやすい時期です。
だからこそ、最初の一本から守ってあげることが大切。
虫歯菌の感染を意識する
子どもの虫歯はほとんどの場合、ママやパパが持つ虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌)がなんらかのかたちで赤ちゃんにうつってしまうことが原因と考えられています。
虫歯がある人のだ液のなかに、たくさんの虫歯菌が含まれているので、ママやパパが使ったスプーンで頻繁に子どもに離乳食などを与えることで、菌が移っていくと考えられます。
家族みんなの口腔ケアを見直すきっかけにもなりますね。
だらだら食べ・甘い飲み物に注意
離乳食が進むと、おやつや果汁を口にする機会も増えます。
「食べたら磨く」「ダラダラ与えない」「寝る前に甘いものをあげない」の3つを意識するだけでも、虫歯リスクは大きく下がります。
哺乳瓶にジュースを入れたまま寝かせるのは特に避けましょう。
1歳までに歯医者さんデビュー
日本小児歯科学会は、最初の歯が生えたら、または1歳までに一度小児歯科を受診することを推奨しています。
虫歯の有無だけでなく、生え方や口腔機能、ホームケアの方法まで丁寧にアドバイスしてもらえます。「むし歯ができてから行く場所」ではなく、「健康を守るために通う場所」と考えると、心理的なハードルも下がりますよ。

気になる症状とよくある疑問
歯の生え始めは、初めての出来事ばかりで「これって普通?」と気になることもたくさん。
よく寄せられる疑問にお答えします。
歯が生えるときに熱は出るの?
歯が生えるときに発熱する(38℃以上の熱が出る)ことはありません。
発熱がみられたり、異常にむずかったりする場合は、これらの症状は歯が生えかけていることが原因ではないため、感染症にかかっていないかどうか医師の評価を受けるべきです。
微熱程度なら経過観察でも、高熱の場合は別の原因を疑いましょう。
【警告】38℃以上の発熱・激しいぐずり・食欲不振が続く場合は、「歯のせい」と決めつけず、必ず小児科を受診してください。
1歳を過ぎても生えてこないけど大丈夫?
1歳くらいまでは生えなくても問題ないといわれていますが、1歳を過ぎて1本も生えてこない場合は、念のため小児歯科で診てもらいましょう。
乳歯萌出遅延は、低体重児として生まれたり、早産だったりした場合に多く見られます。
生える時期が遅れているだけで、3歳くらいまでには乳歯が生え揃うケースが多くあります。
生まれたときから歯が生えているのは異常?
生まれた時にすでに生えている歯のことを先天性歯といいます。
一般に下顎の真ん中に生えていることが多いようですが、日本人ではまれで、0.1%といわれています。
先天性歯により、舌の下側が傷ついたり、ママのおっぱいに傷をつける場合などは、歯を丸めたり、抜歯することが必要です。
授乳トラブルにつながる場合は、早めに小児歯科へ相談しましょう。
左右で生え方に差があるけど・・・
左右で数ヶ月のズレが出ることは珍しくありません。
片側だけ半年以上経っても生えてこない場合は念のため受診すると安心。
レントゲンで歯胚があるかどうかを確認できます。
30年前と比べた最新の生え始め事情
赤ちゃんの乳歯が生えるタイミング、実は時代とともに少しずつ変化しています。
日本小児歯科学会が実施した全国規模の調査によると、現代の赤ちゃんの歯にはいくつかの興味深い傾向があります。
平均すると1ヶ月ほど早く生えるように
1988年の調査と2019年の調査を比較すると、乳歯の萌出開始時期は平均して約1ヶ月早まっていることが報告されています。
栄養状態や生活環境の変化が背景にあると考えられていますが、はっきりした原因は明らかになっていません。
個人差は以前より広がっている
それぞれの歯のはえ始めの時期の幅は、特に男の子の上あごの第二乳臼歯では、早い子は1歳半ごろ、遅い子では3歳9ヶ月と大きな個人差が見られました。
「みんな同じ」ではなく「みんな違う」が当たり前の時代になってきています。
SNS時代だからこそ比較しすぎない
同じ月齢のお友達がもう何本も歯が生えていると、つい焦ってしまうもの。
でも、SNSやママ友トークで見聞きする情報はあくまで他のお子さんのケース。
わが子のペースを尊重し、写真や記録で「過去のわが子」と比べると、成長の喜びをまっすぐ感じられますよ。
育児が楽しくなる!歯の記録を残そう
赤ちゃんの歯は、二度と戻ってこない貴重な成長の証。
後から振り返ったとき、「あぁ、こんな時期があったな」と思える宝物になります。
はじめての一本をお祝いしよう
欧米では「Tooth Fairy(歯の妖精)」の文化があるように、歯のイベントを家族で楽しむ風習があります。
日本でも、最初の一本が生えた日を記念日として、家族で写真を撮ったり、ささやかなお祝いをしたりするご家庭が増えています。
「歯デビューの日」を母子手帳に書き込んでおくと、後から見返したときに笑顔になれますよ。
歯型・写真・動画で残す
最近は乳歯ケースや歯型保存キットなど、思い出を形にできるアイテムも豊富。
生え始めの白い点が見えた瞬間や、初めて歯ブラシをくわえた表情を動画に残しておくと、お子さんが大きくなったときに一緒に観て楽しめます。
歯が生えたら食べられるものも広がる
前歯が生えたら噛みきる練習、奥歯が生えたらすりつぶす練習・・・と、歯の本数に合わせて食事の幅もどんどん広がります。「今日はこんなものが食べられた!」という小さな発見が、毎日の育児に新しい彩りを添えてくれるはずです。
まとめ:焦らず楽しく見守ろう
赤ちゃんの歯が生える順番や時期には大きな個人差がありますが、おおまかには「生後6〜9ヶ月で下の前歯から始まり、2歳半〜3歳までに20本がそろう」のが一般的な流れです。
下の前歯 → 上の前歯 → 側切歯 → 第一乳臼歯 → 乳犬歯 → 第二乳臼歯という順番を頭に入れておけば、「次はどこかな?」と楽しみに待つことができます。
よだれの増加・歯ぐずり・何でも噛みたがる・歯ぐきのふくらみといったサインに気づいたら、歯固めや冷やしタオルで赤ちゃんの不快感を和らげてあげましょう。
最初の一本が生えたら、ガーゼや赤ちゃん用歯ブラシでのケアをスタートし、1歳までに小児歯科デビューをするのが理想です。
気をつけたいのは、38℃以上の発熱や強い症状は「歯のせい」と決めつけないこと、そしてネックレス型歯固めなど事故リスクのあるアイテムを避けることです。
1歳3ヶ月〜1歳半を過ぎても1本も生えてこない場合や、左右差が極端な場合は、念のため小児歯科に相談すると安心です。
赤ちゃんの口元から覗くピカピカの白い歯は、家族みんなにとって最高のプレゼント。
焦らず、比べず、わが子のペースを大切に。
歯が生えるという小さな奇跡を、毎日たっぷり楽しんでくださいね。
