テレビを見ているとき、絵本に夢中になっているとき、ふと我が子の顔を見ると口がぽかんと開いている・・・。そんな姿を見て「かわいいけど、このままで大丈夫かな?」と気になったことはありませんか。実はこの「お口ぽかん」、単なる癖ではなく、お口周りの筋肉の発達に関わる大切なサインである可能性があります。
この記事では、子どものお口ぽかんがなぜ起こるのか、放っておくとどんな影響があるのか、そして今日から親子で楽しく取り組める口を閉じる遊びや習慣について、歯科分野の情報をもとにわかりやすくまとめました。難しいトレーニングを無理強いする必要はありません。遊びの延長で自然に口周りの筋肉を育てていく方法を、ぜひ一緒に見ていきましょう。
子どもの「お口ぽかん」とは?よくあるサイン
お口ぽかんとは、話したり食べたりしていないときに、無意識のうちに唇が開いたままになっている状態を指します。
専門的には「口唇閉鎖不全症」と呼ばれることもあり、近年、小児歯科の現場ではこの状態を単なる癖ではなく、お口の機能が十分に育っていないサインの一つとして注目するようになっています。
近年、小児歯科では”お口ぽかん”は単なる癖ではなく、お口の機能が十分に発達していないサインの一つとして注目されています。
起きているときと寝ているとき、どちらも要注意
「起きているときはたまに閉じているから大丈夫」と思われがちですが、実は寝ているときの開口も見逃せないサインです。
睡眠中の開口は、日中のポカン口と同様、あるいはそれ以上に注意すべきサインです。
これは、覚醒時に意識的に口を閉じていたとしても、睡眠中は無意識下での呼吸が優位になるため、口呼吸が完全に習慣化していることを示唆しているからと考えられています。「寝顔がかわいい」で終わらせず、日中の様子と合わせてチェックしてみましょう。
実はめずらしくない、多くの家庭が抱える悩み
お口ぽかんは決して珍しい状態ではありません。
ある全国調査では、約5人に1人の子どもに「お口ポカン」や「いびき」の症状が見られるという結果が報告されています。
約5人に1人の子どもに「お口ポカン」「いびき」の症状。
治療に公的医療保険が認められる「口腔機能発達不全症」の実態について全国調査を行いました。
さらに、3〜12歳の子どもを持つ親を対象にした意識調査では、7割近くの親がお口ぽかんと口唇閉鎖不全症の関係を知らなかったという結果も出ています。
ロッテが2022年に実施した、3〜12歳の子どもを持つ親215人を対象にした「お口ぽかん」に関する意識調査では、70.2%の親が『「お口ぽかん」は口唇閉鎖不全症の可能性がある』ということを知りませんでした。
一方で、リスクを知った親の約7割が予防や対策に取り組みたいと考えているという前向きな結果も出ており、決して珍しい悩みではないことがわかります。

お口ぽかんが起こる主な原因
お口ぽかんの背景には、いくつかの要因が重なっていることが多いといわれています。
原因を知ることで、どんな対策が効果的か見えてきます。
口輪筋・舌の筋肉の発達不足
まず大きな原因として挙げられるのが、口の周りにある口輪筋や舌の筋肉の発達不足です。「お口ぽかん」は、舌や口周りの筋肉の弱さが一番の原因です。
子どもの場合は、口を閉じるための舌筋や口輪筋がしっかり成長しないと口を閉じられなくなります。
また、上あごの発達と鼻呼吸のしやすさも密接に関わっており、上顎が狭く、鼻が発達しないことで、鼻呼吸が難しくなり、もっと酸素を吸うためにぽかんと口を開けてしまうことも原因の一つとされています。
やわらかい食事と噛む回数の減少
現代の食生活の変化も無関係ではありません。
全体にやわらかい食事を好む・食べものをよく噛まずに水などで流し込んでしまうといった新型の偏食により、噛む回数が減っていることが考えられます。
よく噛むという動作は、口周りの筋肉を自然に鍛えるトレーニングでもあるため、噛む機会が減ることで口を閉じる力そのものが育ちにくくなっていると考えられます。
鼻づまり・アレルギー性鼻炎の影響
鼻での呼吸がしづらい状態も、お口ぽかんを引き起こす要因のひとつです。
アレルギー性鼻炎や鼻づまりなどで鼻呼吸がしづらいと、自然と口呼吸になりがちで、それが習慣化すると口を閉じる筋力がさらに弱くなってしまうという悪循環に陥ることがあります。
加えて、口を使った遊びの機会が減っていることも背景として指摘されています。
口笛を吹く・風車を回す・シャボン玉や風船を膨らます、これら子どもの口遊びが少なくなっていることも、筋力の低下につながっています。
放っておくとどうなる?知っておきたいリスク
お口ぽかんを「そのうち治るかな」と様子見にしてしまう家庭も少なくありません。
しかし、放置することでいくつかの影響が積み重なっていく可能性があります。
歯並び・かみ合わせへの影響
口が開いた状態が続くと、舌の位置や唇の力のバランスが崩れやすくなり、歯並びやかみ合わせに影響を及ぼす可能性があるといわれています。
習慣が長く続くほど、あごの成長にも影響しやすくなるため、早めに気づいてあげることが大切です。
風邪をひきやすくなる・感染症のリスク
鼻には空気中のウイルスや細菌をブロックするフィルターのような役割がありますが、口呼吸ではその防御機能が働きません。
鼻はフィルターとしての機能を担っており、吸い込んだ空気中のウイルスや細菌を捕捉します。
鼻呼吸では、これらの病原体が鼻毛や粘膜によって阻止されますが、口呼吸ではこの防御機能が働かず、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
また、口の中が乾燥しやすくなることで、唾液による自浄作用が弱まり、虫歯のリスクが高まることも心配されています。
睡眠の質や集中力への影響
お口ぽかんが習慣化すると、寝ているときに舌が下がって気道が狭くなり、いびきをかきやすくなることがあります。
眠りが浅くなると日中ぼんやりしてしまい、勉強や遊びへの集中力にも影響することがあるため注意が必要です。

今日からできる!口を閉じる遊び5選
お口ぽかん対策と聞くと難しいトレーニングを想像するかもしれませんが、実は普段の遊びの中に取り入れられるものがたくさんあります。
ここでは親子で楽しみながら口輪筋を育てられる遊びを紹介します。
シャボン玉・風船ふくらまし
シャボン玉を吹いたり、風船を口だけでふくらませたりする遊びは、唇でしっかり空気をコントロールする練習になります。
遊びの中で自然と口輪筋を鍛えることができるのが「風船」です。
手で吹き口をおさえずに、唇でくわえて風船をふくらませることができるかチャレンジしてみましょう。
公園や自宅の庭で気軽にできるのもうれしいポイントです。
吹き戻し・口笛・ハーモニカ
「吹く」動作を伴う遊び道具は、口輪筋のトレーニングにぴったりです。
シャボン玉や吹き戻しのほか、笛や風車、吹き矢・ハーモニカ・ラッパなどもお勧めです。「吹く」という動作は、口唇の力を鍛えるだけでなく、息をしっかりと吐き切る練習にもなります。
お祭りの屋台にある吹き戻しのおもちゃなども、子どもが夢中になりやすいアイテムです。
ペットボトルを使ったおうちトレーニング
もう少し年齢が上がってきたら、道具を使った遊びも取り入れてみましょう。
ペットボトルの先に大きめのボタンをつけた糸を巻きつけ、少量の水を入れたペットボトルに、ボタンを上唇と下唇でくわえてペットボトルを持ち上げる遊びです。
3分間キープを、1日3セット目標にしてみましょう。
歯を使わず唇の力だけで持ち上げるのがポイントで、ゲーム感覚で兄弟姉妹と競争するのも盛り上がります。
また、風船をふくらませる遊びはきちんと口元の筋肉を使い、息を入れてふくらませないとできないため、自然と口輪筋が鍛えられます。
遊びながらトレーニングできるため、お子さまも楽しく続けられます。
という点でも、日常に取り入れやすい対策のひとつといえるでしょう。
親子で楽しむ「あいうべ体操」のやり方
お口ぽかん対策として歯科医院や自治体でも広く紹介されているのが「あいうべ体操」です。
福岡市のみらいクリニック院長で内科医の今井一彰先生が考案した体操で、道具を使わずどこでも取り組めるのが特長です。
基本のやり方
やり方はとてもシンプルです。
(1)「あー」と口を大きく開く(2)「いー」と口を大きく横に広げる(3)「うー」と口を強く前に突き出す(4)「ベー」と舌を突き出して下に伸ばすという4つの動作を1セットとして繰り返します。
1日30セットを目安に、毎日続けることが効果を実感するポイントとされています。
(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けますという指導が一般的です。
続けるコツと注意点
小さな子どもにとって「1日30セット」は少しハードルが高く感じられるかもしれません。
お風呂の時間や歯みがきの前後など、生活のリズムに組み込んでしまうと無理なく継続しやすくなります。
鏡の前で親子一緒に「変な顔対決」のようにして楽しむのもおすすめです。

年齢別・お口ぽかん対策のポイント
お口ぽかんへの向き合い方は、子どもの成長段階によっても変わってきます。
子どもの口呼吸は、成長や発育に大きく影響するため、早めの対応が重要です。
とはいえ、子どもだけで継続してトレーニングを行うことは難しいため、親子で一緒に遊び感覚で取り組めるトレーニングが効果的とされています。
0~1歳ごろ:授乳・離乳食で土台をつくる
この時期はまだトレーニングというより、しっかり吸う・しっかり噛む経験を積み重ねることが大切です。
離乳食が進んだら、月齢に合わせて少しずつ噛みごたえのある食材も取り入れ、口周りの筋肉を育てる土台をつくっていきましょう。
2~3歳ごろ:遊びの中で自然に鍛える
3~6歳ごろの幼児期では、遊びを通じて口まわりの筋肉を使うことが大切とされています。
この時期はまさにシャボン玉や風船、笛のおもちゃなどが活躍するタイミングです。
「トレーニングをやらせる」のではなく「一緒に遊ぶ」という感覚で取り組むことが、無理なく習慣化させるコツといえます。
こんな時は歯科や専門機関へ相談を
おうちでの遊びや体操を続けても、なかなか改善が見られない場合や、次のような様子が気になる場合は、かかりつけの小児歯科や耳鼻咽喉科に相談してみることをおすすめします。
- いつも口がぽかんと開いていて、閉じるとすぐ疲れた様子を見せる
- いびきや呼吸の乱れが続いている
- 鼻づまりが慢性的に続いている
- 出っ歯や歯並びの乱れが気になり始めた
特に、出っ歯の傾向がある子どもの場合、口が閉じにくく口呼吸が習慣化しやすいといわれています。
歯並びの状態によっては、舌のトレーニングと合わせて専門的な診断が必要になることもあるため、気になる様子があれば早めに相談してみましょう。
歯並びに関するより詳しい情報は、日本小児歯科学会などの公的な情報源も参考になります。日本小児歯科学会のウェブサイトでは、子どもの口腔機能に関する情報も紹介されています。
まとめ
子どものお口ぽかんは、多くの家庭で見られる身近な悩みであり、決して珍しいことでも、親の育て方のせいでもありません。
原因の多くは口輪筋や舌の筋肉の発達段階に関わるものであり、シャボン玉や風船遊び、あいうべ体操など、日常の遊びや習慣の中で少しずつ育てていくことができます。
大切なのは、完璧を目指して頑張りすぎないことです。
今日紹介した遊びの中から、お子さんが楽しめそうなものを一つだけでも生活に取り入れてみてください。
親子で一緒に「変な顔」を作って笑い合う時間そのものが、口周りの筋肉を育てるだけでなく、かけがえのないコミュニケーションの時間にもなるはずです。
気になる様子が続く場合は、一人で抱え込まず、かかりつけの歯科医院に相談しながら、無理のないペースで向き合っていきましょう。
