「まだ言葉が出てこない」「周りの子はもうおしゃべりしているのに」・・・1歳を過ぎたころから、わが子の言葉の発達について気になり始める親御さんはとても多いものです。SNSや育児雑誌で「1歳半で〇語話す」といった情報を目にすると、つい比較してしまいがちですよね。
しかし、言葉の発達は身長や体重と同じように個人差がとても大きい分野です。この記事では、公的な統計データをもとに1歳児の語彙数の目安をわかりやすく解説するとともに、言葉が増える時期の特徴や、家庭で楽しみながらできる関わり方まで詳しくご紹介します。読み終えるころには、きっと今日から子どもとの会話がもっと楽しくなるはずです。
1歳の語彙数はどれくらいが目安?
まず気になる「1歳児は平均して何語くらい話せるのか」について、公的データをもとに見ていきましょう。
子育て中の親御さんにとって最も信頼できる情報源のひとつが、厚生労働省が実施している乳幼児身体発育調査です。
1歳0~1ヶ月頃は約6割が単語を発する
厚生労働省が公表している調査データによると、1歳0カ月~1カ月で約6割の子どもが単語を口にするようになると報告されており、多くの子どもは1歳の終わりごろになると2~3語の単語を使い出すなど、言語機能が発達していくとされています。
つまり1歳になったばかりの時期は、まだ喃語(なんご)中心の子と、単語を話し始めている子が半々くらいに分かれる段階だといえます。
1歳3ヶ月頃には8割以上が単語を発語
さらに月齢が進むと、単語を話せる子どもの割合はぐっと増えていきます。
1歳3ヶ月(生後15ヶ月)頃には単語の発語数が増えてくる時期で、86.1%の子どもが単語を言えるようになるというデータがあります。
この時期になると「マンマ」「ワンワン」といった単語を発する姿が見られる家庭が一気に増えてきます。
1歳半では9割以上が単語を話す
そして1歳半という節目を迎えると、さらに多くの子どもが言葉を話すようになります。
1歳半(生後18ヶ月)頃には94.7%の子どもが単語を話せるようになるとされており、この時期に自治体で実施される1歳半健診でも、発語の状況が確認される項目のひとつとなっています。

語彙のカウント方法を正しく知ろう
「うちの子は何語話せているんだろう」と数えようとしたとき、意外と迷うのが「何をもって1語とカウントするか」という点です。
ここを正しく理解しておくと、無用な不安を減らすことができます。
発音が不完全でも立派な1語
1歳児はまだ口や舌の筋肉が発達途中のため、大人のようにはっきりと発音できません。
しかし発音が不完全でも語彙としてカウントして問題ありません。
発音が不完全なのは当たり前で、大人が聞いて「ああ、あれのことだな」と分かれば、立派な1語です。「バナナ」を「なな」、「りんご」を「ご」、「くるま」を「ぶーぶー」と言う場合も語彙としてカウントします。
単語の一部だけでもOK
長い単語をすべて発音できなくても、一部だけを切り取って言うケースもよくあります。
言葉の一部だけを言う場合も、それが特定のものを指していればカウントできます。「アンパンマン」を「あんぱん」、「(いないいない)ばあ」を「ばあ」と言うケースがこれにあたります。
鳴き声や擬音語も語彙のひとつ
動物の鳴き声や乗り物の音を真似ることも、立派な言葉の発達のサインです。
動物の鳴き声や物の音も語彙に含まれます。
絵本を見ながら「ワンワン」「にゃーにゃー」と言ったり、救急車の音を聞いて「ピーポー」と言ったりするのも、意味と音が結びついている証拠です。
意味と音が結びついているかどうかが、語彙としてカウントできるかの重要なポイントになります。
1歳半健診でチェックされる発語の目安
1歳半頃になると、多くの自治体で乳幼児健診が実施されます。
この健診では言葉の発達についても確認が行われるため、事前に目安を知っておくと安心して当日を迎えられます。
話せる単語の数は3~10語程度
1歳半健診で確認される発語数について、1歳半(1歳6ヶ月)は、多くの自治体で乳幼児健診が行われる、発達の一つの節目です。
この時期には、9割以上のお子さまが意味のある単語を1語以上話すようになるとされています。
話せる単語の数は3語から10語程度と個人差が大きいとされています。
中には10~20語程度話す子どももおり、幅がとても広いのが実情です。
言葉より先に理解力が育っていることも
発語の数だけでなく、健診では「言葉の理解」も重視されます。
話せる言葉が少なくても、大人の言うことを理解できていれば心配はいらないケースがほとんどです。「靴を持ってきて」といった簡単な指示に応じて行動できるようであれば、理解力が順調に育っている証拠といえるでしょう。
警告:健診で発語が少ないと指摘されても、それだけで発達に問題があると決めつける必要はありません。
あくまで多くの子どものデータに基づく「目安」であり、個人差の範囲内であることがほとんどです。
言葉の発達に個人差が生まれる理由
同じ月齢でも、なぜこれほど語彙数に差が出るのでしょうか。
ここでは個人差が生まれる背景について整理します。
理解語彙と表出語彙は別物
子どもの言葉には、頭の中で理解している「理解語彙」と、実際に声に出して話す「表出語彙」の2種類があります。
1歳児はまだ話せる言葉(表出語彙)が少なくても、理解している言葉(理解語彙)ははるかに多いのが一般的です。
まだ話せる言葉は少なくても、頭の中ではたくさんの「言葉の貯金」をしています。
大人の言うことはますます理解できるようになり、「おもちゃ、ないないして」といった簡単な指示に従えることも増えてきます。
この「言葉の貯金」が十分に蓄積された後、あるとき堰を切ったように発語が増える子も少なくありません。
指差しの有無も発達のサイン
言葉そのものだけでなく、指差しの様子も発達を見るうえで大切な要素です。
指差しも一つの目安です。
子どもが意思を持って自発的な指差しができているのであれば、発達に問題はありません。
話す言葉が少なくても、指差しで気持ちを伝えようとする姿があれば、コミュニケーション意欲は順調に育っているといえます。
性格や環境による違いも大きい
言葉の発達スピードは、性格や日々の環境によっても左右されます。
慎重な性格の子は「間違えたくない」という気持ちから発語をためらう傾向があるとされ、逆に活発な子はどんどん試すように言葉を口にする傾向があります。
兄弟姉妹の有無や、日頃どれだけ会話のやり取りがあるかといった環境要因も影響することが知られています。

1歳半から始まる語彙爆発期とは
1歳半を過ぎたころから、多くの子どもに訪れるのが「語彙爆発期(ボキャブラリースパート)」と呼ばれる時期です。
この時期の特徴を知っておくと、成長の見通しが立てやすくなります。
50語を超えると語彙が急増する
語彙数がある程度の量に達すると、そこから加速度的に言葉が増えていく現象が知られています。
1歳半から2歳半にかけて語彙が急激に増えます。
単語を50個ほど喋ることができるようになってくると、『モノには名前がある』という理解が進み、2歳で語彙数は200ほどになるとされています。
「モノには名前がある」という気づきが、語彙爆発の引き金になっているという指摘は非常に興味深いポイントです。
1日に覚える新しい言葉の数
語彙が増えるスピードは月齢が進むにつれて加速していきます。
1日あたりに新しく覚える言葉の数についての報告では、16カ月児で18語、18カ月児では33語程度と、徐々に新しい言葉を覚えるスピードが上がっていくとされています。
この時期はまさに、子どもの脳の中で言葉のネットワークが目まぐるしく広がっている真っ最中なのです。
2語文の登場も目前に
語彙が50語を超えるあたりから、単語をつなげて話す「2語文」が出始める子どもも増えてきます。
単語のみのおしゃべりから2語文「ワンワン、いた」「ぎゅにゅう、ない」へと成長していきます。
また文部科学省の資料でも、1歳半頃の子どもは「やだ」といった拒否を示す片言や「ブーブー」などの一語文を使い、2歳になる頃には「マンマ ほしい」などの二語文を話しはじめるとされており、公的な指針としても同様の発達段階が示されています。
言葉を育む家庭での関わり方
語彙数の目安を知ったところで、次に気になるのが「では家庭で何をしてあげればいいのか」ということでしょう。
特別なことをする必要はなく、日常の中でできる工夫がたくさんあります。
とにかくたくさん話しかける
言葉の発達において最も基本となるのが、大人からの声かけです。
大人が積極的に関わることの重要性は様々な研究結果などでも示されています。
子どもの行動や気持ちに合わせながら、たくさん話しかけ、子どもの「話したい」「伝えたい」という意欲を育てていくことが大切です。
オムツ替えや食事の場面など、日常の何気ない瞬間に「今からオムツ替えようね」「これはにんじんだよ」と声をかけるだけでも、立派な言葉のインプットになります。
絵本の読み聞かせで語彙を広げる
絵本は、日常会話だけでは触れる機会が少ない言葉に出会える貴重なツールです。
動物や乗り物、食べ物などが描かれた絵本を一緒に開き、指差しをしながら名前を教えてあげることで、楽しみながら語彙のインプットを増やすことができます。
何度も同じ絵本を読みたがるのは、その言葉をしっかり定着させようとしている証拠でもあります。
同じものへの呼び方を統一する
言葉を覚え始めたばかりの時期は、ひとつの物に対する呼び方をなるべく統一してあげることも大切なポイントです。
犬を「イヌ」と呼んだり「ワンワン」と呼んだりと、日によって表現がバラバラだと、子どもが混乱してしまう可能性があります。
家族間で呼び方をある程度そろえておくと、子どもも安心して言葉を吸収できます。
子どもが話すのを急かさない
つい「言ってみて」と言葉を促したくなりますが、無理に発語を急かすのは逆効果になることもあります。
子どものペースに合わせて、話したくなったタイミングを待つ姿勢も大切です。
指差しをした瞬間や、何かを見つめている瞬間を逃さず言葉を添えてあげることで、無理なく自然な形で語彙を増やしていくことができます。

言葉の発達で気になったときの相談先
目安を知っていても、実際にわが子を目の前にすると不安になる瞬間があるものです。
そんなときに頼れる相談先を知っておくと、いざというときに安心です。
1歳半健診を活用する
1歳半健診は、専門家に相談できる貴重な機会です。
1歳半健診では、積み木を使い指先の微細運動の発達を診たり、意味のある言葉や物事を理解できているか、コミュニケーションがとれるかなどを確認したりします。
日頃気になっていることがあれば、遠慮せずにその場で相談してみましょう。
地域の子育て支援センターや保健センター
健診のタイミング以外でも相談できる窓口はたくさんあります。
市区町村の保健センター(育児相談や健診時に対応)、子育て支援センター、小児科・かかりつけ医、発達支援センターや療育機関といった場所では、専門知識を持ったスタッフが日々の悩みに耳を傾けてくれます。
「気になったらすぐ相談する」という姿勢が、結果的に親御さん自身の安心にもつながります。
比べすぎずわが子のペースを見守ろう
ここまで語彙数の目安についてお伝えしてきましたが、最後にお伝えしたいのは「数字にとらわれすぎないでほしい」ということです。
1歳半で言葉があまり出ていないからといって、すぐに「発達に問題がある」とは限りません。
実際、「2歳頃に急に話し始めた」という子どもも多くいます。
警告:SNSなどで見かける他のお子さんの発語エピソードと比較して落ち込む必要はまったくありません。
言葉の発達には性格・環境・きょうだい構成など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
大切なのは、話せる語彙の数そのものよりも、子どもが「伝えたい」という気持ちを持っているかどうかです。
指差しや表情、身振りで一生懸命に何かを伝えようとする姿があれば、言葉の土台は着実に育っています。
焦らず、目の前のわが子のペースに寄り添ってあげましょう。
より詳しい調査データを確認したい方は、厚生労働省が公表している一次資料もあわせてご覧ください。
まとめ
1歳児の語彙数は、月齢が上がるにつれて着実に増えていきますが、その速度には非常に大きな個人差があります。
1歳0~1ヶ月頃は約6割、1歳3ヶ月頃には8割以上、1歳半には9割以上の子どもが単語を話せるようになるというデータはあくまで目安であり、わが子がその通りに進むとは限りません。
発音が不完全でも、単語の一部だけでも、鳴き声の真似だけでも、意味と結びついていれば立派な語彙のひとつです。
1歳半を過ぎると多くの子どもに語彙爆発期が訪れ、そこから言葉はぐんぐん広がっていきます。
それまでの間は、たくさん話しかけ、絵本を読み、子どものペースを見守りながら、親子の会話そのものを楽しんでみてください。
数字よりも、目の前で一生懸命に何かを伝えようとするわが子の姿を大切にしていきましょう。
