「いないいないばあ」をしても、うちの子はまだ笑ってくれない・・・そんな悩みを抱えていませんか。赤ちゃんの成長には個人差があるとわかっていても、周りの子と比べて不安になってしまうのは、多くの親御さんが経験することです。実は「いないいないばあ」で笑うようになる時期には、赤ちゃんの脳の発達が深く関わっていることをご存じでしょうか。
この記事では、発達心理学の知見をもとに、赤ちゃんがいないいないばあで笑うようになる月齢の目安や、笑いを引き出す遊び方のコツ、笑わないときに知っておきたいポイントまで、まるごと解説します。
読み終える頃には、今日からの育児が少し軽やかになるはずです。
いないいないばあで笑う仕組みとは
赤ちゃんがいないいないばあで笑うのは、単に「顔が出てきて驚いたから」ではありません。
そこには記憶力・予測力・社会的なコミュニケーション能力という、複数の発達要素が関わっています。
仕組みを知っておくと、赤ちゃんの反応の変化がより愛おしく見えてくるはずです。
対象の永続性という発達のカギ
発達心理学者ジャン・ピアジェは、赤ちゃんが「目の前から物が消えても、それがどこかに存在し続けている」と理解する力を「対象の永続性」と呼びました。
感覚と運動を通した外界への働きかけを繰り返しながら、対象の永続性や対象に意図的に働きかける手段と目的の関係が成立していく時期があります。
この力が育つ前の赤ちゃんにとって、顔が手で隠れることは「消えてしまうこと」と同じ意味を持ちます。
対象の永続性は生後8ヶ月くらいから成立するとされていますが、実際にはもう少し早い月齢から芽生え始めるという見方もあります。
記憶力と予測する楽しさ
対象の永続性が育つと、赤ちゃんは「隠れた顔がまた出てくるはずだ」と予測できるようになります。「いないいないばぁ」で喜ぶのは、何度も繰り返すことで消えた顔が「ばぁ!」のタイミングで現れることを期待し、期待通りに現れたことが嬉しくて笑うのだと考えられています。
これは大人が漫才の「オチ」がわかっていながら笑ってしまう感覚と似ており、記憶と予測が一致したときの快感が、赤ちゃんの笑顔の正体だといえるでしょう。

いないいないばあで笑う時期の目安
ここからは、月齢ごとにいないいないばあへの反応がどのように変化していくのかを具体的に見ていきましょう。
あくまで目安であり、成長のスピードには大きな個人差があることを前提に読み進めてください。
生後3〜4か月ごろ:あやし笑いが始まる時期
楽しい、嬉しいといった感情から笑うのは生後3か月ごろからで、この時期になるとパパやママがあやしたり一緒に遊んだりすると笑うようになります。
この段階では、いないいないばあの「隠れる→出てくる」という流れそのものを理解しているというより、顔を近づけて声をかけてくれること自体を喜んでいると考えられます。
声をかけながら優しく笑いかけるだけでも、赤ちゃんにとっては十分な刺激になります。
生後5〜6か月ごろ:声を出して笑い始める時期
生後5か月ごろを過ぎると声を出して笑うようになります。
またいないいないばあを喜ぶのは個人差はありますが、およそ生後5〜6か月ごろからといわれています。
この時期になると、短期記憶能力が発揮され、一時的に親の顔が隠れても隠れた先に親がいることを記憶できるようになり、いないいないばあを楽しめるようになってきます。「キャッキャッ」と声を立てて笑うようになったら、記憶力と予測力が育ってきているサインだと捉えてよいでしょう。
生後8か月以降:はっきり喜ぶようになる時期
生後8か月前後になると、多くの赤ちゃんが対象の永続性をしっかりと獲得し、いないいないばあへの反応がより明確になります。
この時期は1つ1つの因果関係を結び付け、様々なことを覚えていく、いわゆる「賢く」なっていく大事な時期です。
全身で笑ったり、自分から親の手を退けて「ばあ」を催促したりする姿が見られるようになるのも、このころからです。
笑うタイミングや反応の仕方は赤ちゃんによって本当にさまざまなので、周囲の子と比較しすぎないようにしましょう。
月齢別に見る笑顔の発達の違い
「そもそも赤ちゃんの笑顔にはどんな種類があるのか」を知っておくと、いないいないばあへの反応をより正確に理解できます。
新生児微笑と社会的微笑の違い
生まれたばかりの赤ちゃんが見せる微笑みは、感情を伴わない反射的なものです。
生理的微笑は口角が横に引き上げられて微笑んでいるように見える表情で、外部からの刺激は必要ないため「自発的微笑」とも呼ばれ、徐々に減少して社会的微笑へと移行していきます。
一方で、人の声や顔を分かって反応し微笑を見せることを「社会的微笑」といい、生後3か月ごろの赤ちゃんが最もよく微笑を見せますが、この時期にはまだ人の顔を識別できているわけではないので、誰の顔が見えても微笑が現れます。
この違いを知っておくと、「早く笑った=特別に発達が早い」というわけではないことも理解しやすくなります。
人見知りの始まりとの関係
いないいないばあを楽しめるようになる時期は、人見知りが始まる時期とも重なります。
個人差はありますが、生後8か月ごろになると特定のよく知っている人を選んで笑うようになり、このころには自分のお母さんやお父さんの顔を分かって笑うようになり、この時期くらいから人見知りが始まるようになります。
人見知りが始まった赤ちゃんは、知らない人がいないいないばあをしても笑わず、逆に不安そうな顔をすることがあります。
これは愛着関係がしっかり育っている証拠でもあるので、心配しすぎる必要はありません。

いないいないばあで笑わない原因とは
「同じ月齢の子はもう笑っているのに、うちの子は無反応・・・」という悩みは、育児中によく聞かれます。
まずは焦らず、考えられる原因を整理してみましょう。
個人差の範囲内であるケース
楽しくて笑い始める時期には個人差があり、笑う回数が少なかったり感情から笑うのが遅かったりすると不安になってしまうこともありますが、あまりにも心配な場合はかかりつけ医や定期健診で相談すると気持ちが楽になります。
多くの場合、数週間から1〜2か月ほど様子を見ているうちに、少しずつ反応が変わってくることも珍しくありません。
体調やタイミングが影響しているケース
お腹が空いている、眠い、機嫌が悪いといったタイミングでは、どんなに上手にあやしても笑ってもらえないことがあります。
また、いないいないばあの動きが速すぎたり急すぎたりすると、赤ちゃんが驚いてしまい、笑うどころか泣き出してしまうこともあります。
警告:赤ちゃんの顔のすぐ近くで急に大きな声を出したり、勢いよく手を離したりする遊び方は、驚きすぎて泣いてしまう原因になるため避けましょう。
まずは赤ちゃんの機嫌が良いタイミングを選び、ゆっくりとしたテンポから試してみることが大切です。
笑顔を引き出す遊び方のコツ
ここでは、いないいないばあで赤ちゃんの笑顔を引き出しやすくする具体的なコツを紹介します。
すぐに実践できるものばかりなので、ぜひ今日から試してみてください。
「間」を意識したテンポで行う
いないいないばあの面白さは、隠れている時間の「間」にあります。
隠す時間が短すぎると赤ちゃんが顔を覚えきれず、逆に長すぎると飽きてしまいます。
3か月半の赤ちゃんであれば1秒見ないで覚えていれば十分とされており、まずは短い間から少しずつ長くしていくとよいでしょう。「いない、いない・・・ばあ!」とゆっくり声に出しながら、赤ちゃんの反応を見つつ間を調整してみてください。
声のトーンと表情を豊かにする
「ばあ」の瞬間に、いつもより高めの声で、目を大きく開いて笑顔を見せると、赤ちゃんの興味を引きやすくなります。
赤ちゃんは大人の表情の変化にとても敏感なので、単調な動きよりも、毎回少しだけ違う表情や声色を見せてあげると、飽きずに楽しんでくれることが多いようです。
月齢に合わせたバリエーションを取り入れる
月齢が上がってくると、同じパターンの遊びだけでは反応が薄くなることもあります。
ハンカチやぬいぐるみで顔を隠す、テーブルの陰から顔を出す、ぬいぐるみを使って「ばあ」をさせるなど、道具を変えるだけでも新鮮な刺激になります。
以下は月齢別のおすすめのやり方の一例です。
- 生後3〜4か月ごろ:両手で顔を隠すシンプルなやり方からスタートする
- 生後5〜6か月ごろ:隠す時間を少しずつ長くし、声のトーンに変化をつける
- 生後7〜9か月ごろ:ハンカチやタオルを使って隠し方にバリエーションを持たせる
- 生後10か月以降:赤ちゃん自身にハンカチをめくらせて「ばあ」をさせてみる
赤ちゃんの発達段階に合わせて少しずつ難易度を上げていくと、遊びを通して記憶力や予測する力をさらに伸ばすことにもつながります。

いないいないばあがもたらす発達効果
いないいないばあは単なる遊びではなく、赤ちゃんの発達にとって多くの意味を持つ活動です。
ここでは代表的な2つの効果を紹介します。
記憶力・予測力・脳の発達を促す効果
いないいないばあを繰り返すことは、「見えなくなったものは存在し続ける」という概念を体験的に学ぶ機会になります。
対象の永続性を獲得した子供は、手の向こうに隠れていることを認識できるので、「ばあ」で現れる瞬間を楽しんでくれるようになります。
この体験の積み重ねが、記憶力や見通しを立てる力の土台を作っていくと考えられています。
親子の愛着形成を深める効果
いないいないばあは、赤ちゃんと親とのコミュニケーションそのものでもあります。「いないいない」で見えなくなってしまった親の顔が「ばあ!」と同時に出てくることで、赤ちゃんは「困っているときにいつでもいてくれる人」ということを学べます。
遊びを通して「いなくなっても必ず戻ってきてくれる」という安心感が育まれることは、その後の人見知りや後追いといった発達段階にもつながる、大切な土台になります。
笑わないときに心配になったら
いろいろ工夫しても反応が薄い場合、不安になってしまうのは自然なことです。
ここでは、家庭でできるチェックポイントと、相談先の目安を紹介します。
家庭でできるチェックポイント
笑う・笑わないだけでなく、以下のような点も合わせて見てみましょう。
- 名前を呼んだときに、音のする方向を見ようとするか
- 親の顔をじっと見つめる、目が合う瞬間があるか
- 抱っこや声かけに対して、体の動きや表情に変化があるか
- 他のあやし遊び(くすぐり遊びなど)には反応するか
いないいないばあだけに反応が薄くても、他の場面で表情豊かに過ごしているようであれば、その子なりのペースで発達が進んでいる可能性が高いといえます。
相談先の目安と健診の活用
注意:自己判断で「発達に問題がある」と決めつけず、気になる場合は必ず専門家に相談してください。
乳幼児健診は、こうした不安を専門家に相談できる貴重な機会です。
健診では、子どもに対して簡便な発達検査などが行われることが多く、また健診会場での親子の様子を観察することもあります。
日頃の様子をメモしておき、健診時やかかりつけの小児科で率直に相談してみましょう。
専門機関の情報として、国立障害者リハビリテーションセンターでも乳幼児期の発達の気づきについて解説されています。
詳しくは国立障害者リハビリテーションセンターの解説ページもあわせてご確認ください。
まとめ
赤ちゃんがいないいないばあで笑うようになる時期には、記憶力・予測力・対象の永続性という発達の積み重ねが関係しています。
目安としては生後3〜4か月ごろからあやし笑いが見られ始め、生後5〜6か月ごろに声を出して笑うようになり、生後8か月以降にはよりはっきりとした反応が見られるようになるケースが多いとされています。
ただし、これはあくまで目安であり、個人差があることを前提に、赤ちゃん自身のペースを大切に見守ることが何より重要です。
うまく笑ってくれない日があっても、間の取り方や声のトーンを変えてみたり、月齢に合わせた遊び方を工夫したりしながら、親子でこの時間そのものを楽しんでみてください。
もし気になることがあれば、一人で抱え込まず、乳幼児健診やかかりつけ医を上手に活用しながら、安心して育児を続けていきましょう。